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みちのくグランド・ツーリング【Day5】 [drive/touring]

霊場・恐山

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宿坊の広い部屋で朝5時に目を醒まし、大浴場の湯に浸かる。
窓の外は肌寒く昨日からの雨が細く降り続いており、スマートフォンで天気予報を見ようとして、全館圏外であったことを思い出した。
6時半、朝のお勤めに参加させていただく。
地蔵殿では三人のお坊さんがお経を唱えてくれるのだが、これが魂に届くレベルのサウンドなのだ。
推定BPM160のハードな和太鼓に乗せて、大音声[だいおんじょう]のバリトン・ボイスがユニゾンで堂内に響き渡る。
思わずヘッド・バンギングしそうになる自分に、いやこれお経なんだから、と言い聞かせる。
これはもはや、ある種のトランス・ミュージックだと思った。
その後は本殿に移動し、焼香を上げる。
宿泊者全員の名前を呼んで祈祷をしてくれたのもありがたく、お坊さんの講話もわかりやすい、とても充実した30分間であった。

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宿坊に戻り、全員で朝食を摂ってから解散。
とても良い体験をさせてもらったと感じ入りつつ、雨の霊場を後にする。
今日は、下北半島の外周ルートを反時計回りにぐるっと走るつもりであった。
しかし今回の大雨により、津軽海峡沿岸の複数箇所で土砂崩れが発生し、R279が通行止めとなってしまったのだ。
孤立状態となった下風呂温泉は恐山からわずか30kmの距離にあり、しかも昨年秋のGTで宿泊させてもらっているため、胸に迫るリアリティがある。
早期の復旧を祈りつつ予定を変更、K4→K174でむつ市街に戻った。

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R338で陸奥湾に沿って走り、川内からK46で内陸方面に北上する。
ロケーションに比してクルマが多いのは、地元の方々が通行止め区間を大きく迂回するために、このルートを使わざるを得ないからなのであろう。
皆さんの邪魔をするわけにはいかないので、K253で西へとノーズを向ける。
初めて走るこの道は谷間の2車線で、交通量もゼロに近く、3速⇔4速でルーズなワインディングを楽しく走ることができた。
雨は止む時間帯もあり、幌は殆ど乾いたようなので、我慢できずにルーフ・オープン! それ行けっ!
丸二日ぶりに本来の姿に戻ったボクスターが、冷たい風を切って加速する。
やはり、気持ちよさは3倍増に跳ね上がった。
高原の交差点を左折し、R338/海峡ラインの南半分を走る。
ここは2速メインのテクニカルなコーナーが続く、東北屈指のロング・ハンドリング・コースである。
路面には枝葉が散乱し、風が霧雨をキャビンに巻き込むが、そんなもんはお構い無しだ。
誰もいない山岳路を自身のペースで走りきり、陸奥湾に出て東へと戻った。

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流れの悪いむつ市内で再び雨が降り始め、仕方なく屋根を閉じる。
標高70mの横流峠を越えて太平洋側に出ると、R394は何もない原野を貫く爆走国道となる。
雨水の流れる路面に注意しながら前車を安全にパスしつつ、ボクスターは南へとひた走った。
六ヶ所村でK25にスイッチ、小さなワインディングの森を抜け、雨のカントリー・ロードを快走。
R394→K173と結び、R4沿いの道の駅「しちのへ」へ、昼飯を喰うべく立ち寄った。
併設の食堂でなかなか旨いカツ丼を平らげ、ストレートな広域農道を経由してR394で八甲田を目指す。
雨は緩急をつけて降り続き、路面は相変わらずのハード・ウェットだが、マイペースで走らせている限り、ボクスターはグリップを喪う気配すら見せない。
急斜面のタイト・コーナーを次々とクリアし、峠を越えて八甲田エリアに入った。

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雨で景色は望むべくもなく、K40からR103へと八甲田山を反時計回りに走り続ける。
最初は調子よく走っていたのだが、平日にもかかわらず大混雑の酸ヶ湯温泉を過ぎたあたりから前が詰まり始め、その先のハードなワインディングで更にハードなチンタラ走行を強いられることとなる。
ずいぶん以前にも同じ道で同じ目に遭ったことを思い出し、このルートはもう走らないぞ、と心に固く誓うのであった(涙)。

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R102で名勝・奥入瀬渓流を遡上する。
小雨の中、駐車帯にボクスターを停めて渓流沿いを少し歩いてみたが、荒天で水が濁ってはいるものの、その清々しさに変わりはなかった。
渓流の森を抜けると、そこは十和田湖である。
暗い曇天を映す湖面はグレイに沈み、対岸の峰も霧に隠れてはいたものの、それでもここに立った到達感と爽快感は格別であった。
しばし湖を眺めてからリスタート、反時計回りに十和田湖を一周してみる。
北岸のR102はカルデラの頂を走るため、湖はまったく見ることができない。
が、R454に入ると道は湖面レベルまで一気に駆け下り、常に左手の湖を意識しながら、気分良く走ることができた。
時刻は17時、このまま宿へと向かうことにする。

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十和田湖畔温泉「ホテル十和田荘」は、典型的なニッポンの大型温泉旅館だ。
12畳の和室に通されるや否や、浴衣に着替えて温泉へGO!
露天風呂では東北在住と思われる茶髪のおにいさんと、温泉談義を楽しんだ。
いつの間にか神経質な世の中になってしまったが、独りの旅先で話相手になってくれる人がいると、本当に嬉しく思えるのだ。
半個室でいただいた晩飯はとても旨く、追加で発注した郷土料理のせんべい汁と十和田バラ焼にも大満足。
昼はカツ丼、夜はバラ焼に生ビールと、ストイックな宿坊の精進料理とは正反対にも程がある(笑)。

風呂から上がって部屋に戻り、毎夜の如く今日の旅日記をOneNoteにしたためる。
窓の向こうからは、強まった雨が屋根を叩く音が聴こえてくる。
しかしよく降りやがる、と小さく独りごちる。
温帯低気圧が去った後には停滞前線が居座っているようで、各地とも天気が安定せず、東北地方の予報も曇りや雨が先行している状況だ。
晴れなくてもいい、せめて雨が上がってほしいと願いながら、布団に潜り込んだ。


本日の走行距離は、356km。
走行時間は6時間46分、平均速度は54km/h。
平均燃費は、10.4km/lであった。

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忠

こんにちは。

いや~、いつから空中浮遊ができるようになったのでしょうか?恐山で修行されたのでしょうか?笑)
僕も3年前に同じようなルートを回りました。残り僅かな日程になりましたが「晴れなくてもいい、せめて雨が上がってほしい」と恐山の仏さんのお祈りしておきました。
by 忠 (2021-08-29 16:26) 

Dion

酸ヶ湯温泉も奥入瀬渓流もいつか行ってみたいところの一つです。
私の場合・・・、飛行機で行ってレンタカーとなりそうですが。
ルートマップをみて思い出したのですが
下北半島にある仏ケ浦も行ってみたいスポットです。
>下北半島の外周ルートを反時計回りにぐるっと走るつもりであった。と言うことで断念されたのですね。
こちらまで来てルート変更は悲しいですよね。
by Dion (2021-08-29 18:12) 

yasu

wataさん、こんにちは

私も泊まりました!十和田荘。
この先のルートが気になります。。。
晴れることを祈りつつ、続きを楽しみにしています。
by yasu (2021-08-29 21:23) 

あてんざ

wataさん、こんにちは。ご無沙汰しております。
恐山の宿坊は、私は未経験ですがホームページで見て宿泊を検討したことがあります。エントランスとかお部屋とか大変きれいで立派ですよね。お坊さんによる朝のお勤めとご祈祷、wataさんのテキストを読んで私も興味が湧いてきました。大音声の迫力とトランス状態がよく伝わってきました(笑)。次に下北半島に行く時は、私も是非宿坊に泊まりたいです。
by あてんざ (2021-08-30 12:21) 

wata

忠さん、こんにちは。

「いつから空中浮遊が・・・」って、もしかして旅館の部屋での写真をご覧いただいてのことですか?
いやいや、修行が足りず1ミリも浮遊できておりません(笑)。
八甲田&十和田周辺は景観も道も良く、北東北におけるゴールデン・ルートですよね。
それだけに一部では交通量が多く、しかも雨に降られ、今回はやや消化不良となりました。
以降の行程にも雨がつきまとうことになりますが、ほぼマイペースで走れましたので結果オーライです!

by wata (2021-08-30 19:10) 

wata

Dionさん、こんにちは。

酸ヶ湯や奥入瀬などでは、確かにレンタカーを多く見かけたような気がします。
青森空港から1時間のレベルですから、東京から700km走っていく必然性はありませんよね(笑)。
下北半島外周も何度か走っていますが、そのうち仏ヶ浦には2回ほど立ち寄っています。
1回目は最寄りのR338駐車場から断崖路を歩いて下りましたが、帰路の上りで足腰崩壊。
25kmほど北の佐井港から出ている遊覧船で行くことを、強くお勧めする次第です(汗)。

by wata (2021-08-30 19:11) 

wata

yasuさん、こんにちは。

おぉ、ホテル十和田荘に泊まられましたか!
迷子になりそうなデカい温泉旅館で、比較的リーズナブルで晩飯も旨かったのですが、実際に宿泊するまでペットOKってのは知りませんでした・・・。
隣室から聞こえてくるヒステリックな小型犬の鳴き声が、就寝時までに止んでくれて何よりでしたよ(笑)。
翌日以降も雨に祟られはしましたが、おかげさまで楽しく南下させてもらっています。
引き続き、ご覧いただけると幸いです!

by wata (2021-08-30 19:12) 

wata

あてんざさん、こんにちは。

恐山はGTで何度か訪れていますが、宿泊するのは今回が初めてでした。
私も事前にWebを見て何となくイメージはしていたものの、その建屋や大浴場は本当に立派でビックリ仰天しましたよ。
2食つきで12,000円、既述の通りいろいろとルールや制約があるとはいえ、そもそものロケーションや霊場に泊まるという特別感を含め、値段以上の価値がある体験だったと思っています。
あてんざさんも、ご興味があれば是非一度泊まってみてください!

by wata (2021-08-30 19:12) 

ラビー

通行止め部分は、晴天の龍泊ラインとセットでまた行く理由ということで(笑 大変なお天気にあたってしまったけれど、楽しく走れているようでよかったです(ほっ
恐山の宿坊、もっとこう、重い雰囲気かと想像していたので、驚きました。先日、高野山で体験してきたのを思い出しました。
奥入瀬、うちも大雨にやられたので、晴れの再訪要です(笑
あ、仏ヶ浦、帰りの登りで、私も崩壊の目に遭いました(笑 二度と階段では行きません。
続き、楽しみにしています。
by ラビー (2021-08-30 21:01) 

wata

ラビーさん、こんにちは。

はい、おかげさまで何とか無事に楽しく走らせてもらっています。
下風呂付近の通行止めは3週間経った今でも未開通のようで、当地で生活されている皆さんは本当に大変だと思います。
いつかまた再訪し、今度はラビーさんちのようにフェリーを併用して、津軽・下北の両雄を攻めてやろうと思っています。
で、仏ヶ浦散策は・・・やっぱり、佐井から観光船で行きます(笑)。

by wata (2021-08-30 23:05) 

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