・・・GT7日目、新冠の朝はやっぱり快晴。
温帯低気圧の襲来以降、極めて質の高い秋晴れの日が続いている。
永六輔&中尾ミエ夫妻が全力でラジオ体操に興じるその横で、ボクスターにこびりついた蟲の死骸を洗い落とす。
旨いパン食の朝飯をいただき、コーヒーを飲んだらチェック・アウト。
いつものように屋根が乾いたことを確認し、幌を下ろした。
今日もまた、素晴らしい一日になるだろう。
D1026→D208→D71と快速道道3連発、交通量皆無の高速ワインディングをマイペースで北上する。
もう当たり前に感じつつあるが、このような快走路が至る所にあるのが北海道の凄いところだ。
続くR237は追越禁止区間もあるが、白線に変わるや否や全部まとめて安全にブッコ抜く。
日高を過ぎ、占冠を通り抜け、昔捕まった下金山にレーダー・パトカーが潜んでいないことを確認。
大いに気分を良くして富良野市に入ったが、今日は午前中に行きたいところがあるため、D298→R237とノン・ストップでおとなしく通過する。
D213で美瑛の街を出ると再びアクセルを入れ、D1160で森のワインディングを駆け上がっていった。
混雑する終着のパーキングにボクスターを駐め、満員のロープウェイに乗る。
今回、初めて
大雪山旭岳を歩くことにしたのだ。
山頂駅から1時間の周遊コースに出る。
日本一早い紅葉が始まったとのことだが、正直、それほどでもない。
しかし眼前の巨大な旭岳は新雪を纏い、その背後、青い空に白い雲が湧く素晴らしい景観である。
真冬並みの寒さと聞き、シャツにパーカー、ジャンバーと着込んできたものの、高低差があり足場も悪いコースを歩いているうちに汗をかいてきた。
楽ではないが、特段の息苦しさもなく、普通に歩くことができている。
今回わざわざ旭岳へとやってきたのは、
手術後の自分を試そうと考えたからでもある。
大丈夫だとわかってはいたものの、何か具体的な証が欲しかったのだと思う。
本格的な登山ではない、単なる観光トレッキングではあるが、それでも大いなる充足感に満たされて、下りのロープウェイ乗り場に向かった。
D1160→D213とハイペースで美瑛まで戻り、街中の売店で買った茹できびを喰らう。
茹でたてアツアツ、とても甘くて旨い。
時刻は14時近くだが、実質、これが今日の昼飯だ。
ここからD966で十勝岳へと向かうが、途中を左折して丘を上がる。
美瑛周辺に点在する数々の「観光丘陵」とは異なり、この丘に洒落た名前は無く、観光客もいない。
しかし何となく気に入ってしまい、北海道を走る度に立ち寄っているのだ。
今回も流れる風景を楽しみながらゆったりと走り、道道へと戻った。
平日なのに観光バスや自家用車が犇めく「青い池」の駐車場を横目に、スピード・アップ。
その先のワインディングを堪能し、山を上りきったところにある駐車場から「
吹上露天の湯」へと歩いた。
自衛隊の砲音が響く中、涼しい風に吹かれて入る露天風呂は最高である。
地元民や旅人の方々を言葉を交わしつつ、熱めの湯にのんびりと浸かった。
が、素っ裸で歩いているうちに足を滑らせ、左足人差し指を痛打。
いよいよ足元も覚束なくなってきたか・・・と、我ながら少々情けなくなった(涙)。
D291で上富良野の街まで一気に駈け下り、給油を済ませてから夕刻のD298で宿へと向かう。
夕茜舎[あかねやど]は、周囲に何もない丘陵に建つキレイなゲストハウスだ。
独り旅のライダー、乗り鉄、撮り鉄のお三方と同じテーブルで旨い飯を喰い、ビールを呑み、旅路を語り合った。
皆、北海道が大好きなのだ。
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■Day8
富良野の空は曇天だが、雨の気配はない。
宿の子供達がスクール・バスに乗るのを見送り、ボクスターの窓を拭いてから朝食だ。
今日もまた3杯も喰ってしまい、中年太りの階段をまたひとつ上ってしまったことは極めて遺憾である(汗)。
宿を出て丘を下り、富良野の街を抜けてD135からR452に入った。
本日のハイライトのひとつでもあるこの国道は、何もない樹海の中を夕張まで60km以上もひた走る道だ。
トラックなども走っているが、概ねマイペースで走り続けることができる。
更に途中の分岐でほとんどのクルマは三笠方面へと流れていき、以降はほぼ独走状態となった。
途中には3速まで落とすワインディング・セクションもあり、なかなかの走り応えである。
R452を外れ、シューパロ湖にかかる橋へと立ち寄る。
前回来たのは2年前だが、今回も変わらず立ち枯れの木が林立し、湖底に沈んだはずの道や橋が露出している。
渇水期だからなのかもしれないが、ここには何とも言えないシビアな寂寥感が漂っており、その光景になぜか惹き付けられてしまうのだ。
街に出て、道の駅「
夕張メロード」で小休止。
売店で売っている夕張メロンソフトクリームは、個人的に今まで喰ったすべてのソフトクリームの中でもトップ・クラスの旨さだと思う。
その旨さを存分に堪能してから、ボクスターのイグニッションを捻った。
R274をいったん東に走り、D74を南下する。
路面はところどころ荒れているが、そんなもんは最小限のペース・ダウンでクリアし、じゃんじゃん走り続ける。
D59からD287→D482と厚真町を走ると、災害復旧工事による通行規制が目につくようになる。
昨年の大地震で被害が大きかった町だ、一日も早い復興を祈らずにはいられなかった。
R36に出、「
味の大王 総本店」でカレーラーメンを喰う。
都内でも何軒かカレーラーメンを売りにしている店で喰ったことはあるが、やはりここの味には敵わない。
汗をかきながら平らげて、大満足で店を後にした。
苫小牧からは、R276→R453で支笏湖に到達。
ポロピナイの湖畔からは、樽前山の勇姿をハッキリと見ることができた。
引き続き西へ、R453を走って洞爺湖に立ち寄り、D703で伊達方面に向かうと、その道はあった。
道道981号、上長和萩原線。
都道府県道で900番台があるのは恐らく北海道だけだろう、何だかちょっと嬉しかった。
R453を戻り、今夜の宿がある蟠渓温泉へ。
「
湯人家[ゆのとや]」にチェック・イン、露天風呂で汗を流したら晩飯だ。
北海道最後の夜、奮発したステーキ・セットで腹は大いに膨れ、部屋でひとやすみしてから再び風呂へと向かう。
GTも終盤、明日の夕方にはもうフェリーに乗っているはずだ。
時間の速さが俄には信じられないのだが、「現実」が音を立ててすぐそばまでやって来ているのだ。