小沢峠のトンネルを抜けて埼玉県に入ると外気温は一段と下がり、橋梁部などでは路面が白く凍結しています。
試しにブレーキを踏むとゴゴゴッとABSが作動するレベルだったので、漫然運転とならぬよう注意してK53を北に向かいました。
下名栗の集落を越えて名栗湖まで上がり、有間ダムの堰堤上でひとやすみ。
気温は氷点に近いものの風は無く、それほど寒さを感じません。
最後の紅葉が彩る山の端に円い月が隠れると同時に、東から眩しい陽光が射し始めます。
静かなダム湖の風景を眺めつつ、持参したあんドーナツの甘さをポットのコーヒーで中和しながら、この先のルートを思案するのでした。
入間川に沿って、引き続きK53を北上していきます。
やがて道は川を離れ、山伏峠を越える1.5車線レベルの山坂屈曲路となります。
放射冷却の影響を受けにくい林間部は凍結の気配も薄いため、2速スポーツ・モードでアクセル・オン!
対向車に注意しながら、峠道をグリグリと楽しく駆け上がっていきました。
リエゾンと割り切っているR299で秩父の市街地に入り、R140を西へ向かいますが、山間部に入っても前走車の数は減らず、対向車線を含めダンプカーがひっきりなしに走っています。
こりゃ参ったと思いましたが、ダンプの前面には「二瀬ダム災害復旧工事車両」と書かれており、案の定、三峯神社への参拝客と思われる一般車両と共にすべてR140の旧道へと三叉路を左折していきました。
うひひひひ、しめしめ。
一気に無人となったR140新道は、高規格道路レベルの明るい快走路。
マイペースを取り戻したボクスターは巨大なループ橋・雷電廿六木橋[らいでんとどろきはし]をぐるっと上り、奥秩父もみじ湖の最大貯水量6,300万立方メートルを支える滝沢ダムの脇に拓かれたパーキングに立ち寄りました。
とんでもなく広大な景色の中でうーんとひとつ大きな伸びをしても、私独りしかいません。
このようなポジティブな孤独感に浸れるのも、ソロ・ドライブの大きな魅力なんですよね。
リスタート後もR140を進み、滝川渓谷を下に見ながらぐんぐん標高を稼ぎ、武甲国境の山々を貫く有料の雁坂トンネルに突入。
山梨県側の料金所で740円を支払い、塩山方面への長いダウンヒルを高めのギアで気持ちよく下っていきました。
牧丘町まで出たところでK219に転じ、再び山へと向かいます。
13年前に仲間と走ったこの道は、記憶や記事にある通りの素晴らしいワインディング・ロードでした。
ブドウ畑を貫く2車線路を快調に上っていき、突き当たりの90度クランクで琴川を渡ると、その先は山の中の1.5車線路。
2速ホールドで落ち葉を蹴散らしながら駆け上がっていくのですが、路面状況は望外に良く、安心してドライビングに興じることができます。
幾多のコーナーをクリアすると視界がパッと開けて稜線に飛び出し、再びセンター・ラインが登場。
標高1,500mに水を湛える乙女湖まで、めちゃくちゃ楽しく走ることができました。
県道の終点から接続する川上牧岡林道は冬期通行止めとなっていましたが、この道を北に進むと、山梨-長野県境にして日本最高所の車道峠である標高2,360mの大弛峠[おおだるみとうげ]に達します。
今回は南行も閉鎖されていたのでK219をそのまま引き返すこととなったものの、往路とはまったく違う表情を見せる林道上がりの県道で、ハード&ファンなダウンヒルを堪能することができました。
ちなみにこのK219から乙女湖を経て清里までを結ぶ県道・林道・農道群は、クリスタルラインと総称される70km弱の山岳ルートです。
タフな区間も多くありますが、季節が良くなったら一度ボクスターで走破してやろうと思っています。
牧丘の町に出る手前を右に曲がり、広域農道/フルーツラインに入りました。
沿道には民家や畑があり、人やクルマの往来もゼロではないため、左手の富士山をチラ見しながらのんびりと走ります。
K206に合流、3kmほど走って「鼓川温泉」に到着。
近隣で有名な「ほったらかし温泉」のような派手さや観光要素のない、山梨市営の地味な日帰り温泉施設ですが、そのためかほぼ貸切状態で袋を弛緩させることができました。
冬晴れにひとっ走りしてからの露天風呂⇒風呂上りのオープンカー、この流れが最高なんですよねぇ(笑)。
空腹を携えて再びフルーツラインで向かったのが、K31沿いの「里山亭」です。
山梨の郷土料理であるほうとうが喰いたくなって近隣を検索した結果ヒットした店で、市街地から外れた場所にもかかわらず、多くのお客さんで賑わっていました。
席に着き、発注してのんびり待つこと15分。
何の衒[てら]いもないシンプルなほうとうなのですが、これが過去ベストに選出すべきレベルの旨さだったのです。
モチモチの麺や味の濃い地物野菜もさることながら、自家製の味噌を使っているというつゆが旨いのなんのって奥さん。
最後の一滴まで飲み干そうとして、熱々の鉄鍋を素手で抱えてしまいそうになりました(汗)。
大満足で店を出たら、渋滞が始まる前にさっさと撤収です。
勝沼ICから乗った中央自動車道はガラガラで、ヅラが飛んでいくんじゃないかぐらいのペースで自宅へと走りました。
本日の走行距離は、358km。
走行時間は6時間40分、平均速度は55km/h。
平均燃費は、10.8km/lでした。
冬のドライブ。
ウィンター・タイヤが無いので積雪路や凍結路はNGですが、天候や路面状況に注意すれば、山間部であっても走れる道はあちこちにあると思っています。
特にオープンカー乗りにとっては、冬はむしろベスト・シーズンと言えるかもしれません。
今回も、暖房を入れながら冷たい風を浴びつつワインディングを走らせているうちに、何度も「最高」に達してしまった次第です(笑)。