新たに装着したタイヤ、
ファルケン・アゼニスFK510のアタリは実に滑らかで、快適なハイウェイ・クルージングが続いている。
車検から上がって間もないボクスターは、フロント・ウィンドウに保安基準適合標章を貼りつけたままだ。
途中のPAで空気圧を適正値に調整したりしながら300km強を走り、混雑する新潟市内を抜けて10時半頃にフェリー・ターミナルへ到着した。
これから北海道へ、グランド・ツーリングに出るのだ。
12時発小樽行きの
新日本海フェリー「あざれあ」は出航が1時間遅れの予定となっていたが、その理由が「荒天のため」というのが気にかかる。
埠頭でコンビニ弁当を喰い、アナウンスに従って乗艦。
今回は小さな個室「ツーリストS」を予約していたため、フロントでカード・キーを受け取ってから部屋に入った。
フェリーは13時に出航。
空は晴れ、風もそれほど強くはないものの、外洋に出ると艦体は前後に揺れ始めた。
すぐに治まるだろうとタカを括っていたのだが、1時間経っても2時間経っても揺れは続いている。
新潟⇔小樽便は何度か利用しているが、初秋の日本海はいつも穏やかで、今日のように揺れた記憶はない。
この航路を選ぶ大きな理由のひとつである大好きな艦上露天風呂も、バッシャンバッシャンと波を打って湯が溢れており、身体も袋も激しく翻弄されるがままだ。
不覚にも、酔ってしまったようだ。
いつものように北海道限定ビール「
サッポロ・クラシック」を飲むどころか、夕刻になっても腹も減らず、何も喰う気がしない。
仕方がないので売店で酔い止め薬の「
トラベルミン」を買い求め、服んで寝た。
明朝は万全の体調で上陸できればいいのだが・・・。
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■Day2
朝4時に起床。
艦は微塵も揺れておらず、船酔いもすっかり治っていた。
いいぞ、俺。
身支度を整え、下船案内のアナウンスに従い、ボクスターの眠る第二甲板へと降りてゆく。
5時に接岸、小樽港に降り立つと同時にルーフ・オープン!
空は晴れ、摂氏11度の冷たい風がキャビンに残っていた本土の空気を一気に薙ぎ払う。
長袖シャツだけでは足りず、今シーズン初めて暖房を入れ、シート・ヒーターをオンにした。
まだ交通量の少ないR5からR337へと走って市街部を脱出し、R231で日本海沿いに北上を開始する。
と、すぐに対向車からパッシング。
念のため警戒しながら進んでいくと、「速度取り締まり実施中」の立て看板の先に計測器はあったが、係官は不在であった。
折しも今回のGTは、秋の全国交通安全運動の実施期間と丸カブりである。
こちらも「三無い運動(事故らず/壊さず/掴まらず)」を勝手に標榜中の身、セイフティ・ファーストを心がけ、安全に楽しく走っていこう。
R231はトンネルが多く、日本海の景色を堪能することはできないが、交通量は少なくマイペース走行が可能。
昨日の昼から何も喰っていない腹もようやく減り始め、増毛のセイコーマートでおにぎりを二つ平らげた。
留萌からはR232にスイッチ、定規で引いたかのような水平線を左手に快走を続ける。
苫前、羽幌、初山別と過ぎ、遠別からは国道を離れ平行する町道へ。
無人の牧草地を走り抜け、天塩からD106でオロロンラインのハイライト、サロベツ原野に出た。
オトンルイに建つ28基の巨大な風力発電機を後に、しばらく走ると人造物は道路だけとなる。
何度来ても凄いところだと思うし、この景色がいつまでも残っていてもらいたいとも思う。
空と海と原野の狭間を、ボクスターが走ってゆく。
D254で野寒布岬へ、稚内で北防波堤ドームに立ち寄り、市内を抜けR238を走り宗谷岬に立つ。
その40km先、宗谷海峡の向こうには樺太の島がハッキリと見えていた。
岬からは宗谷丘陵へと上り、実にいい気分で牧草地の間を走る。
そのまま無人のD889を南下、D1077からD1119→D121と走り放題の道道が続く。
あまりの走りっぷりに思わず「こんなに走っていいのか?」と自問し、「いいのだ」と自答した。
引き続き、落合広域農道で大規模草地放牧場を駆け抜ける。
大きな景色の中、より一層気分良く走り続ける。
そんなボクスターを、牛たちがじっと観ていた。
D84で豊富温泉「
ふれあいセンター」に立ち寄り、ひとっ風呂浴びることにする。
この温泉は他に類を見ず、灰色の湯に石油の臭いが漂っている。
温めの浴槽を選んでのんびりと浸かっていたが、ボトルに詰められた原油を手に取ったら臭いが落ちなくなり、石鹸でゴシゴシと洗う羽目になった。
それにしても、凄い温泉があるものだ。
幌延のホクレンで給油し、再びオロロンラインを経由してサロベツ原野の民宿「
あしたの城」にチェック・イン。
素晴らしいロケーションに建つこの宿に泊まるのは2年ぶり三度目だが、今宵の客は初老の写真家と私だけである。
晩飯は宿主夫妻と4人で名物の牛乳鍋を囲み、〆の雑炊まで鱈腹喰わせてもらった。
Bluetoothキーボードをスマートフォンに繋ぎ、
OneNoteに今日のドライブを書き込んでいく。
早朝から動いていたとは言え、一般道だけで1日500km以上を走れてしまうのは、さすが北海道だと改めて思った。
そのうちに睡魔がやってきて、21時過ぎに布団に潜り込む。
すぐに、深い眠りへと堕ちていった。
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ということで、北海道へグランド・ツーリングに行ってきました。
しばらくの間、オッサンの旅日記が続きますが、よろしければおつきあいください!