R317は、山の中を行く快速ワインディング。
まだ夜明け前の山道、コーナーの先に蟠る黒々とした闇の巣を、ボクスターのダイナミック・コーナリング・ライトが次々と暴いてゆく。
明けゆく今治の空は晴天の予報と異なり、雲に覆われている。
国道沿いのローソンでフレンチクルーラー・カスタード&ホイップとアーモンドショコラリング、カフェラテを買い込み、すっかり乾いたトップを下ろして
糸山公園へ。
これから渡ることになる来島海峡大橋を眺めながら、甘いもんばかりのモーニングと洒落込んだ。
初めて走る、
瀬戸内しまなみ海道。
左手に順光の、右手に逆光の海や島々の景色が次々と展開し、実に気持ちがいい。
片側1車線区間もあるが、幸いなことに交通量僅少のためペース・ダウンを余儀なくされることもなかった。
この道は6つの島を橋で結んでおり、それぞれの島にICがあって乗り降りすることができる。
本州手前の最後の島、向島で降りてぐるっと一周してみる。
いつの間にか晴れ渡った空の下、穏やかな瀬戸の海に船や島が浮かび、その上に架かる長大な橋とのコントラストが素晴らしい。
途中の島へ出入りする度に料金が発生するのが残念ではあるが、カネに余裕があれば、いつか他の5つの島も見て回りたいと思った。
国道の橋を渡って尾道に上陸。
これから中国地方を走ろうと思いつつ、行き先もルートも決めていないが、とりあえずR2を西に向かって走り出す。
で、三原から分かれたR185は、ツーリングマップルのリコメンド通り、気持ちの良いシーサイド・ラインであった。
GTの楽しみのひとつは、関東近郊では望むべくもない、海沿いのマイペース・ドライビングである。
そんなR185もクルマが増えてきたので、ここらで内陸へと舵を切ることにしよう。
安芸津からK32→R2バイパスで志和ICへ。
広島の市街地を迂回すべく、広島ICまでの2区間だけ山陽自動車道を利用した。
R54を北に走り、R191でようやく郊外に出、K303をショート・カットに使いR186に入った。
中国自動車道と並行するこの道は、交通量も少なく快走できる2車線の山間路だ。
このまま南下を続けると再び瀬戸内に出てしまうため、引き続き山間のドライブを求めてR434へ右折する。
腹減ってきたけど、こんな山ん中じゃ店も何もないよな・・・と思いきや、ポツンと建つカフェ「
エレファント・スイーツ」を発見し、ABS全開のフル・ブレーキング!
ソーセージ&キャベツの煮物と自家製バゲットのランチで、おいしく空腹を満たすことができた。
食後にツーリングマップルを開き、走り放題走れそうなルートと本日の宿泊地を検討。
スマートフォンで「じゃらんnet」にアクセスし、山口県は湯田温泉の宿を予約した。
山峡のR434をトレース、オレンジ色のガード・レールでおなじみの山口県に入り、そのままダウンヒルを続けるボクスター。
狭かった山道はやがて改良済の豪快な2車線路となるが、なぜ改良したのかわからないほどクルマが少ない。
ツーリングマップルには「中国・四国に多い人の気配を感じない国道」「人気のない山中、走りにひたる」と書かれており、なるほどその通りだと思いつつ、5速⇔6速で走りにひたる。
続くR376も恐らくは初めて走る道で、「コーナーを楽しみつつ走る」のコメント通り、コーナーを楽しみつつ走った。
市街地を抜けてR489を北上、誰もいないK123で独り野谷峠を越えてゆく。
道路中央部に苔が生えているような山峡路ではあるが、このような道を辿るのもまた、ツーリングの楽しみのひとつなのだ。
山口市中心部に程近い、湯田温泉。
中原中也ゆかりの宿という「
西村屋」は老舗の旅館らしく、フロントの方々の礼儀正しい振る舞いが素晴らしい。
ボクスターで到着すると、「オープンカーですからね」と、わざわざ屋根つきの駐車スペースを空けてくれたのだ。
安い素泊まりプランとは思えない広々とした部屋で荷を解き、キレイな湯が溢れる掛け流しの温泉に浸かり、飯を食いに外へ出る。
ガッツリとした洋食が食いたかったので、「
炭火ステーキ 炉舎[ろのや]」で生ビールとガーリック・フライドポテト、およびハンバーグ・ステーキをオーダーした。
もはや、太るのは百も承知である。
ちなみにハンバーグのソースは5種類もあるため、店員のおにいさんにお薦めを聞くと、山芋ベースのソースが一番だという。
写真を見る限り、麦飯にぶっかけて喰うとろろ芋そのまんまである。
いやそれはないだろ~と言うと、「では、特別にもうひとつソースをお持ちしますので、比べてみてください」。
ということで、コンベンショナルな和風オニオンソースも用意してもらったのだが、結果は山芋ソースの圧勝。
食後に店員のおにいさんを呼び、「疑って済まなかった」と深く頭を下げたのであった(笑)。