旨い朝飯を喰ってチェック・アウト、宿を後にして斜里のホクレンSSとローソンに立ち寄ってから、R334で知床半島へGo!
何度となく走っている道ですが、来る度に改良が進んでいるらしく、青いオホーツク海を左手に快走が続きます。
第一級の観光資源である世界自然遺産へと向かう一本道ですから、それなりにクルマも走ってはいるものの、広く見通しがいいので迅速かつ安全にヴッコ抜かせていただくこともできるのです。
自撮り棒に夢中なインバウンドの皆さんやフラフラのレンタカーが犇[ひし]めくウトロの街をサッサと抜け出し、知床五湖方面に向かいました。
景色も線形も素晴らしいワインディングのD93で、善良な観光客の方々の車列に埋もれ超絶チンタラ走行を強いられるボクスター(涙)。
これで駐車場が満車だったらスピン・ターン&全開加速で引き返す肚[はら]を固めていましたが、幸いなことにそこまで酷いことにはなっていませんでした。
知床五湖へ来たのは今から36年前、大学3年生の夏に初めて訪れて以来のことです。
誰もおらず、簡素な駐車場と適当な遊歩道しかなかった当時とはまったく異なり、有料駐車場に建つゴージャスなビジター・センターの周りには大勢の人々がいました。
第一湖まで往復する木道・・・と言うより立派な歩道橋は、見た目がとてもカッコよく、ギンギンの夏空と緑の笹原との間をイイ感じのワインディングのように延びています。
眼前に現れるオホーツク海も背後に聳える知床連山も素晴らしく、汗をかきながらも気持ちよく歩くことができました。
道道を戻り、R334/知床横断道路をドライブします。
ド快晴の下で豪快なワインディングをぐんぐんと上っていくのですが、ピークの知床峠まで上がると、つい先ほどまでバッチリ見えていたはずの羅臼岳は完全に雲の中・・・。
辺りも真っ白で、晴れていれば大きく見えるはずの国後島もその所在すら確認できません。
知床半島は峠を境に天候が全く異なることを知ってはいましたし、何度となく経験もしているのですが、それでもやはり仰天レベルの変わりっぷりなのでした。
ウトロ側より気温が5度以上も低い、霧に包まれた羅臼側をダウンヒル。
細かいサイプが切られたアスファルトにファルケン・アゼニスFK510/FK520Lが立てるサイレンのような音を聴きながら、道内では貴重な連続ヘアピンを駆け下っていきました。
海に面した羅臼の街まで出たところでD87へと左折、北へ走ります。
点在する小さな漁村を結ぶこの道道は、知床半島の東岸ギリギリに敷かれ、20kmほど先で行き止まりとなる最果てへの往還路。
海面にまで届きそうな低い雲に覆われた根室海峡に国後島の姿を認められないまま走り続け、行き止まりの数km手前にあるパーキングにボクスターを駐めました。
旅が非日常を求める行為であるならば、ここはその到達点のひとつに違いないと思います。
海辺に設えられた石組みの風呂は満潮時に海へ沈むのですが、今はちょうど干潮を過ぎたばかり。
毎日清掃して下さっているという管理者の方に許可をいただき、寸志を投じてからその場で素っ裸になって風呂へ入りました。
ここは、湯船の底から湧きだすアツアツの源泉を海の水で強引に冷却するシステム。
その作業は入浴者自身が負わなければならないのですが、極めてありがたいことに、東京から秘湯&野湯めぐりで旅をしているという先客のおにいさんが既にやっていてくれたのでした。
適温からやや熱めの湯に浸かり、後から来た静岡のおじさんと3人で温泉談義などをしながら、改めてこの素晴らしいロケーションに感動します。
お湯は正直、ほぼ海水なので浴感もイマイチなのですが、そんなことはどうでもいいんです(笑)。
お二人が帰った後もしばらく独りで浸かっていたものの、いつの間にか潮が満ちてきたので撤収。
シャワーなどの設備があるわけでもないので、素っ裸のまま浜辺を20-30mほど歩き、山から流れ込んでいる冷たい沢の水でベタベタの身体を洗いました。
いやもう、最高です。
ちなみに帰り際、感謝の意も込めて奮発し、温泉を管理してくれている濱澤水産の売店で天然の羅臼昆布を買ったはいいのですが、こんなにでっかい昆布、何にどう使ったらいいのでしょう?(汗)
道道を羅臼まで戻り、引き続きR335で海沿いに南下していきます。
曇天の空からは細かい雨が降ってくることもありましたが、基本的に交通量は少なく、前走車をスムーズにパスさせていただきながらマイペースで走り続けました。
標津まで来ると、荒涼とした海沿いの風景の中に1軒の家がポツンと建っています。
看板も幟[のぼり]もないのですが、ここ「TOMARI STAY&CAFE」は超絶不定休なスパイス・カレーの店なのです。
周囲の景色からは異世界とも思えるカフェのような店内で、パキスタンカレーとサグチーズ・チキンカレーのあいがけを発注しました。
そもそもこの地でカスリメティのかけられたカレーが出てくることに驚きましたが、食べれば納得、めちゃくちゃ旨い!
東京辺りからの移住者なのかなと思って若い店主に訊いたところ、彼は地元の出身で、数年前に信州から帰ってきてこの建屋を買い取り、店を開いたとのこと。
一時はTVの取材が起因で大変なオーバー・ワーク状態だったようですが、最近は無理をせず、マイペースで不定休営業を続けているのだそうです。
営業時間は前日にならないと決めず、休むことも多いと言う店主に「良く言えば『ユルい』、普通に言って『テキトー』だよね」と誉め言葉を告げると、大いに笑ってくれたのでした(笑)。
再訪を約し、地元のお客さんが増え始めた店を出てリスタート。
にわか雨に打たれたりしながら海沿いのR244を走り続け、D475で走古丹[はしりこたん]に寄ってみます。
30kmほど手前にある有名な野付半島は何度か走ったことがあり、ここも似たような砂嘴[さし]だと思って来たのですが、何もなく、道も景色もイマイチなので引き返しました(涙)。
R243でR44との交点である厚床に達し、D1127を経由してJR根室本線・初田牛駅の跡に立ちます。
数年前、現役の駅だった頃から人の気配すらありませんでしたので、廃駅となった今でも印象はあまり変わりませんでした。
ここからは、北太平洋シーサイドラインと呼ばれる道道群を走ります。
重く圧し掛かる雲の下で景色は優れませんが、森の中から海沿いに飛び出して丘を越えてゆくD142のドライビング・プレジャーは、やはり一級品ですね。
そのままD123→D1039と繋ぎ、文字通り霧に隠れた霧多布岬の展望台付近を軽く歩いてから、少し手前の宿に向かいました。
民宿「霧多布里」は、極めてブイシーな昭和の宿。
一帯は霧に覆われてはいるものの室内は蒸し暑く、破れていた網戸を自らガムテープで補修して部屋の窓を開けました(笑)。
晩飯の主役は豪華な海鮮丼で、10種類以上の新鮮な魚介が盛り込まれているとのこと。
イクラがキライな私でも、気にせずに平らげてしまいました。
なお、今日の客3人はすべて独りで、旅の宿らしく同じテーブルで食事をいただいたのですが、この宿はご主人と奥さんも一緒に食べるというスタイル。
旅人同士の話がほとんどできず、ご主人の講話が長くなってきたところでスパッと辞去させていただき(笑)、パンイチ姿&扇風機全開で床に就いたのでした。
本日の走行距離は、326km。
走行時間は5時間09分、平均燃費は13.4km/lでした。
日本が世界に誇る観光地のひとつである知床五湖は、確かに良く整備されており、インバウンドの皆さんを含む多くの人たちが訪れていました。
が、やはり自身が北海道で立ち寄るべきは、更衣室もなく海に沈んでしまうラフな温泉や、旨いんだけど営業してるかどうか怪しい最果てのカレー屋など、あんまり人が来ないところなんですよね(笑)。