厚岸の朝は、素ん晴らしい晴天!
かなり冷え込んでいるだろうと思いつつ部屋の窓を開けたが、それほど寒くはない。
夜露も降りてはいないようで、すぐに幌を下ろすことができるだろう。
朝飯がまた旨く、湯豆腐にまで牡蠣が載っているのはさすが厚岸である(が、やっぱりイクラだけは喰えない・涙)。
部屋でドリップ・バッグのコーヒーを飲んでから、荷物をまとめて宿を出た。
今日は道内屈指のドライビング・ロードである、北太平洋シーサイドラインを走る。
そう、晴天の予報を見て、このルートのために厚岸に宿を取ったのだ。
屋根を開け、4年ぶりにボクスターで走ったこの道は、やはり最高であった。
気持ちの良いコーナーとアップ&ダウンが続くが、2速にまで落とすような場面はほとんどなく、3速で回転を上げて4速へと繋いでゆく。
ズバッと森を抜けると、青い空と緑の大地との間に太平洋が輝いている。
いやもう、気分爽快である。
35kmの第1レグを走ったところで、霧多布岬に寄ってみる。
名前の通り霧に覆われる日が多いと聞くが、10年前と同様に見通しは良好だ。
終着のパーキングから灯台の先へと歩き、荒々しい海を望む岬の先端に達し、小休止の後に往路を戻る。
結果、自身の体力の無さを改めて痛感することとなった(涙)。
残り50kmの第2レグ、前半は絶景レベルの海沿いを走る。
沿道の牧場では馬がのんびりと草を食み、降り注ぐ陽射しを浴びて仲良く戯れていた。
後半は内陸に入り、根室本線と並行するストレート中心の快速林間路だ。
気温は20度、6速でのクルージングが実に心地よい。
厚岸から落石まで、約85km。
クルマを走らせる歓びを存分に味わうことができる、素晴らしいルートなのだ。
ただし、コーナーを抜けた先で鹿の群れが道を横断していることもあるので、注意が必要である(汗)。
根室の市街地を抜け出し、D35で本土最東端を目指す。
右手には草原や牧場が、左手には青い海が拡がり、目線から上は全周すべてが空なのである。
半島や岬と言えば、山が海に突き出ているようなイメージがあるが、道東エリアのそれは低いテーブルのように真っ平らなのが実に不思議だ。
最高に気持ちの良い海岸線ドライブを経て、納沙布岬に到着。
巨大なモニュメントの向こうには国後島が浮かび、わずか数km先には貝殻島の灯台と平坦な歯舞群島が見えている。
ロシアに支配されている、日本の国土。
何とかならないものかとの複雑な思いを抱えながら、快晴の岬を後にした。
根室の先に群れていたクルマたちはR44をそのまま直進し、R243へと右折したのはボクスター1台。
更にR244へとスイッチすると、完全なるソロ・ドライビングとなった。
ギアは6速のまま、穏やかな海と国後島、野付半島、知床連山を望む快速クルージングが続く。
斜里へと向かうR244と別れ、引き続き海沿いのR335を北上。
途中のパーキングに入って海を眺めつつ、標津のセイコーマートで買っておいたホットシェフの鮭おにぎりを頬張った。
知床半島の東岸沿いに走り続け、羅臼の街からR334/知床横断道路を駆け上がる。
路面に刻まれている細かいサイプが唸りを上げてうるさいものの、最東の山岳ワインディングは2速メインでのドライビングを大いに楽しませてくれるのだ。
この道も何度か走っているが、今日はこれまでにないほどの好天だ。
羅臼岳はその姿を午後の陽光にすべて晒しており、木枯らしのような風が吹く知床峠からはその威容が間近である。
コーナーの緩いウトロ側に入っても晴天は変わらずで、峠の前後ともに晴れているのは今回が初めてだ。
素晴らしいことである。
多くのクルマと共に傾きつつある太陽に照らされたオホーツク海を右手に見ながらR334を走っていくと、1台のワンボックス車が路肩に停まっており、ドライバーやそのご家族と思しき人が手を振っている。
ボクスターを停めて仔細を訊くと、バーストしたタイヤを外すレンチがなくて困っているとのこと。
ということで、ボクスターに常備している十字レンチをお貸しして、無事にスペア・タイヤへと交換してもらった。
そのテンパー・タイヤはかなりくたびれており、空気圧も規定量に達していないと思われたものの、ドライバーさん曰く、もう少し走ればガソリン・スタンドがあるので大丈夫だとのことである。
レンチを貸しただけなのにめちゃくちゃ感謝されてしまったが(笑)、お役に立てたようで本当に良かった。
内陸へと入るR334を外れ、いわゆる「天に続く道」に寄ってみる。
始点にある駐車場は満車状態、皆さんは並んでまで写真を撮っておられたので、お邪魔をしてはいけないと思い直ちに撤収した。
斜里の街に入る手前で更に内陸へと向かい、広大な牧草地帯のストレートを行く。
その向こうには、夕陽に照らされた斜里岳の峻険な稜線が空を切り裂いている。
ここまでハッキリと見えたのは初めてで、その姿は感動的ですらあった。
誰もいない農道を縦横に結んで小高い丘を登った先に、今日の宿「ロッジ風景画」が建っていた。
ロケーションは抜群、建屋もキレイで内装のセンスもいい。
訊けばオーナーさんは埼玉県から移住してきて、セルフ・ビルドでこの宿を建てたのだそうだ。
晩飯はコース仕立ての洋食で、知床鶏やカラフトマス、行者ニンニクなどの地場の食材を丁寧に料理してあり、たいへん旨かった。
夜、あまり寒くなかったので外に出てみると、頭上には満天の星。
天の川を見たのは、いつ以来だろうか。
首が痛くなるまで空を眺めてから、宿に戻った。
本日の走行距離は、400km。
走行時間は6時間09分、燃費は12.2km/lであった。