岩手県、千貫石温泉。
5時半に起きて誰もいない風呂へと向かい、歯を磨き、髭を剃ります。
毎朝のルーティンですが、混雑を避けるべく早めの行動を取るのです。
夜半に降り出した雨がまだ残ってはいるものの、東の空には真っ赤な太陽が昇り始めました。
7時からの朝食バイキングも一番に済ませ、サービスのコーヒーを部屋でゆっくりといただきます。
チェック・アウトをする頃には雨は上がっており、清々しい晩秋の青空が拡がっていました。
乾いた幌を下ろすと、背後の虹がちょうど消えていくところでした。
当初の予定では、今日は栗駒の山の中をひた走ることとしていました。
しかし、走るつもりだった道が軒並み降雪からそのまま冬期通行止となったため、まったく別のルートを組んだのです。
K37を平泉前沢まで走り、北上川を渡って広いK14を南下。
K168にスイッチすると道はやや狭くなりますが、北上川を右手に眺めながら気分よく走ることができました。
R284との交点で川と別れ、川崎藤沢農免農道に突入します。
神奈川県の川崎-藤沢間では絶対に不可能な(笑)、ハイアベレージのワインディング・ランを堪能させてもらいました。
終着からはR456をフォローし、七曲峠で岩手県から宮城県に入ります。
国道とは言え、曲がりくねった地図から予想していた通り、走り放題な県境越えの峠道でした。
R346から別れたK202で再び北上川とジョイント、気温20度の風に吹かれながら堰堤上をのんびりと走っていきます。
道はそのままR45となり、更に川が左へ大きく曲がるところからはK197となりました。
その間、右手には北上川がずっと大らかにたゆとうているのですが、雄大な風景とは裏腹に、少しずつ気持ちに翳が差し始めていたのです。
TVなどで何度も見てはいるものの、現場に立つとやはり胸に迫るものがあります。
東日本大震災から9年、周辺では震災遺構として保存するための工事が行われていました。
ここで起きたことを想うと、言葉もありません。
哀しいほど青い空に強い風が吹き、私は黙祷を捧げることしかできませんでした。
R398はリアスブルーラインと呼ばれ、その名の通り、青い海を眺めながらのワインディング・ランが続きます。
ただし、復旧工事を担うダンプカーも走っていますので、その点には注意が必要です。
湾に沿って、今もなお新しい防潮堤が作られ続けています。
その白い巨きな壁が、次の津波を打ち破ってくれることを願いながら、石巻の市街地へと向かいました。
昼飯はラーメンを喰おうと考え、市内国道沿いの「ラーメン善谷」の暖簾をくぐります。
店のおねいさんにお勧めを訊き、看板の善谷ラーメンを発注しました。
予備知識ゼロで箸をつけたラーメンは、魚介系のスープに独特の縮れ麺がマッチして素晴らしく旨い!
それはもう比肩すべき店が思い浮かばないほどのレベルで、こんなに旨いラーメンが石巻にあるのか、と驚きを禁じ得ませんでした。
機会があれば、是非とも再訪したいと思います。
近くの出光にピット・イン、例によって地域共通クーポンでハイオクを満タンにしてからリスタート。
この先はしばらく走れる道が見当たらないため、石巻女川ICから三陸自動車道に入り、仙台市内を迂回して仙台南部道路/山田ICまでワープしました。
日曜日だからか、思いのほかクルマの多いR286を淡々と走り、残念ながら冬期通行止となっている笹谷峠を諦めて、笹谷ICから山形自動車道で山形県に入ります。
他に誰もいない山形蔵王PAでの独り作戦会議を経て、R13に降りたくさんのクルマと共に臥薪嘗胆のチンタラ走行。
しかし、K263へと逃げ出して再び山へと向かうとクルマは一気にいなくなり、ボクスターはマイペースを取り戻すことができました。
続くK268も快走のワインディング、降りだした雨に幌を上げつつ、南へと走っていきます。
R113を挟んで次に走るのは、広域農道/ぶどうまつたけラインです。
タイトな峠越えから山の中をひた走り、終着の交差点を左折し、誰もいないR13を福島方面に上ってK376への入口を右折。
ダム湖に沿った屈曲路をトレースし、ストレート中心のK151をかっ飛ばしてから、K2で裏磐梯へのヒルクライムを開始しました。
濡れ落ち葉に脚を取られないよう注意しながらボクスターを走らせ続け、ゴールの白布温泉に到着です。
GT最後の宿、「中屋別館不動閣」は、歴史を感じさせる由緒正しい温泉旅館。
通された部屋は小さいものの独り者には十分なサイズ、樹々を映す一面のガラスが実にいい感じです。
今日は宿泊客が少ないようで、露天風呂も内風呂も貸し切り状態でした。
特に内風呂はオリンピック風呂と呼ばれ、掛け流しの湯が並々と湛えられた浴槽は、マジでプールのような長さです。
最後の晩餐は、奮発して米沢牛のすき焼きを追加したのですが、これがもう予想以上の旨さで涙が出ました(笑)。
しかもすき焼きはあくまで追加料理であり、基本の料理は量も品数もそのまんま。
牛スジの煮込みや芋煮汁など、一品一品が大変旨いので、腹が一杯になっても喰うのをやめることができないのです。
最後は、余った卵にすき焼きの残り汁を投入し、ごはんにぶっかけてかっ喰らいました。
死ぬほど腹が膨れたところでごちそうさま、苦しさが少し落ち着いたところで再び風呂に浸かり、放心状態に陥るのでありました(汗)。
本日の走行距離は、378km。
走行時間は6時間25分、平均速度は61km/h。
平均燃費は、10.8km/lでした。