「走り」の要素はゼロ、いわゆるグランド・ツーリングとは異なる、主旨/内容ともに純粋な観光旅行に終始しています。
その次の週末も午前中に所用があったのですが、あまりの好天にもうガマンできず、昼飯も喰わずにイグニッション・キーを引っ掴んでボクスターの眠るパーキングへと走りました。
午後の関越自動車道はたいへん空いており、屋根を開け放ったボクスターで快調に北上します。
あまりにスムーズなので群馬県北部の月夜野ICでアウト、R17で三国峠を越えてゆくこととしました。
登坂車線も整備された快速ワインディングで県境のトンネルまで一気に駆け上がり、苗場やみつまた・かぐらなどの懐かしいスキー場を横目に気持ち良く走り続けます。
街へと下っていく途中からは、残雪を抱いた彼方の山並みが青空に浮かぶ様を見ることができるようになり、満足度はアップしていく一方です。
石打からは、R353で再び山へと上っていきます。
今日は久しぶりにK560/魚沼スカイラインを走りたいと思って分岐を右折しましたが、冬期通行止めを示すバリケードにドライブを阻まれることとなりました。
しかし、この時期でもまだ全線未開通ということは考えにくいため、山向こうのR117をいったん北方向に走り、R253を上って反対側の起点にアクセスしてみたらこれがビンゴ!
全線の3割ほどではありますが、文字通り誰もいない稜線上のスカイラインを、眼下の街を睥睨しながら走ることができました。
いや~、来て良かった!
開通区間の終着からK82で下山、ボクスターは連続するヘアピン・コーナーを難なくクリアしていきます。
日没を迎えた六日町で給油を済ませ、限界に達した空腹を諌めるべく、地元客の皆さんで賑わう「らー麺 羽屋」でつけ麺とチャーシュウ丼をいただきました。
出発直前に捜して予約した今宵の宿は、南魚沼市郊外の「
五十沢[いかざわ]温泉 ゆもとかん」。
一昨年にも泊まったことのある広々とした温泉旅館ですが、今回は室数限定の当日割引プランにヒットしたおかげで、朝食つき5,400円と破格値での宿泊となりました。
純和室の部屋は10畳、ビックリするほど広い内湯と露天風呂は適温かつ湯量豊富な掛け流しで、夜空を見上げつつ独り浸かれば極楽浄土の夢心地。
部屋に戻ってビール片手に明日のルートを「
ツーリングマップル東北」で検討しますが、途中でめんどくさくなって布団に潜り込み、即爆睡です(笑)。
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翌朝も、いい天気。
10℃を下回る気温にやや縮んだ袋が露天風呂で一気に収縮してからゆっくりと弛緩していくその様に、今日もいいドライブとなることを強く確信しました(←そこでか?)。
地産地消の朝飯は野菜が中心ながら、コシヒカリの白飯がいくらでも喰えるように企画されている模様。
特に南魚沼の郷土食「
きりざい」は、細かく刻まれた野沢菜漬や大根、人参などを納豆に加えて飯にぶっかけるという、喰い過ぎ禁止条約違反の例外措置として満場一致で認められるレベルの一品です。
また、カウンターの端に「ご自由にお飲みください」と置かれていたのは、52年間の人生でダントツ&ブッチギリ、かつ残りの人生においてもこれ以上の旨さに出会うことは無いであろうと思われた、自家製の米麹甘酒。
鈍痛ギリギリに膨れ上がった腹をさすりながらボクスターの屋根を開け、また来ようと思える宿を後にしました。
R291を北上、小出の街で交通量が増えることを見越してK70へとスイッチ。
並行していたR252に合流し、ボクスターでは初となる六十里越を走ります。
新潟・福島の両県に跨るこのダイナミックな山岳ルートは、4月末に冬期閉鎖のゲートが開かれたばかりです。
連続するスノー・シェッドに2速ギアとスポーツプラス・モードとの痺れるようなサウンドを響かせ、幾多のコーナーをパスしながら標高を稼ぐうちに、周囲の沢には雪渓が現れ、気温も徐々に低下してきました。
峠のトンネルを抜けると、目に飛び込んでくるのは田子倉湖を挟んだ残雪の山々。
アスファルトに流れる雪解け水を蹴散らしながら、絶景のワインディングをボクスターは走り続けました。
やはりこの道、控えめに言っても最高です!
7年前の衝撃的な豪雨から一部運休が続くJR只見線に沿って、引き続きR252を走ります。
ドライブ自体はたいへん気持ちがいいのですが、停車時に抜いたバスが運休区間の代行バスであることに気がついたり、落ちた橋梁がそのままになっている姿を目の当たりにすると、豪雨の凄まじさや地元の皆さんのご苦労に想いを馳せざるを得ません。
列車が走る姿を見たいと思い、運転区間にある無人の早戸駅に立ち寄って時刻表を確認してみましたが、次の列車まで1時間以上あることがわかったため、撤収です(涙)。
地元車両やツーリング・バイクの一団が増えてきたR252を離れ、会津宮下からR400を北上。
初めて走るこの区間は予想通り交通量ゼロ、明るい2車線路から暗い森の中の狭隘路まで揃う、変化に富んだとても楽しい道でした。
終着の西会津町からは、これまた初走行のK16で東へ。
花畑越しの飯豊[いいで]連峰やゆったりと流れる阿賀川を眺めながら、実に気持ち良く走ることができる道です。
R400、K16とも、携行する2015年度版のツーリングマップル東北には特段のリコメンドはありませんが、個人的にはいずれも「色を塗っておくべき道」だと思いました。
いい道は、まだまだたくさんあるんですね。
山都からR459を経由してK385に入り、今回の目的路のひとつである飯豊檜枝岐大規模林道を目指します。
直線距離で70km以上南に同じ名前の道がありますが、両者は福島県を縦断するべく計画されていた1本の超・大規模林道の一部。
ドライブ好きとしてその由来にそそられるだけでなく、
2015年にクルマ仲間のM郎さんが駆るBMW M235iクーペと実走したこの道は、正に「山岳ハイウェイ」とでも呼ぶべき素晴らしい快走路でした。
今日もガッツリ走って山形県に抜け、そのまま裏磐梯方面へと回り込む作戦です。
で、ワクワクしながらボクスターを走らせていると、路肩に蕎麦屋の小さな看板を発見。
ちょうど昼時だったので、県道から脇道に入ったところにある「
茅乃庵」で大盛りのざる蕎麦をいただきました。
実は私、これまで旨いと思える十割蕎麦を喰ったことがなく、蕎麦はやはり二八が一番だと信じて疑っておりません。
なので、十割を謳うこの店も若干の不安があったのですが、いやこれが旨いのなんの!
キレイな蕎麦は香りも喉越しも素晴らしく、カエシよりもダシを効かせた蕎麦つゆとの相性も抜群です。
人里離れた山の中の民家で営業しているこの蕎麦屋、独りで切り盛りしている店主によれば春から秋の週末しか営業しておらず、5名以上の場合は予約してもらわないと対応できないとの由。
天ぷらもなく、文字通り蕎麦だけの店ですが、いずれまた再訪しようと心にブックマークをしておきました。
店主に訊いたところ、この先の大規模林道は未だ冬期通行止めが続いているとのことで、Uターン。
残念ではありますが、道は逃げないので次回は必ず走り倒してやりますよ(笑)。
改良工事中なのでしょう、でっかいトンネルの掘削現場を横目に見ながらR459の1.5車線屈曲区間でステアリングを切りまくり、喜多方の街に出ました。
引き続きR459で外輪山を越えたボクスターは、裏磐梯エリアに突入。
5つの旧有料道路のうち、最もテクニカルだと思われるK64/磐梯ゴールドラインで、ボクサー・エンジン+ミドシップ・レイアウトの回頭性を十二分に体感してから、眼下にチラリと見えていた猪苗代湖へと向かいます。
天気は下り坂ですが、曇り空からはまだ雨の落ちてくる気配はありません。
K9を外れて立ち寄った田園エリアでは、田に水が張られトラクターが田植えの準備に勤しんでいます。
湖畔をのんびりとトレースし、いつもの青松浜でひとやすみしていると、トヨタ・プリウスにカヌーを牽引させる準備をしていたおじさんが話しかけてくれました。
「P、O、R、S・・・ポルシェ!これポルシェでしょ!じゃ、おにいさんは社長さんでしょ?」
「いや、とんでもない、普通のサラリーマンですよ」
「ポルシェったら社長さんが乗るクルマでしょ。他に何台も持ってるんでしょ?」
「いやいや、これ1台しか持ってませんよ」
「ホントは何台も持ってるんでしょ。これ、(燃費は)リッター5キロぐらいでしょ?」
「いやいやいや、10キロぐらいは走りますよ」
「え~、そんなに走らないでしょ」
「・・・・・・」
結局、『クルマを何台も持っている社長さんのポルシェはリッター5kmしか走らないんでしょ』というおじさんのイメージを覆すことができないまま(涙)、猪苗代湖を後にし帰路に就きます。
深い山の中を1車線で分けてゆくK235で南下しようと走ったのですが、これまた見事に通行止め。
昨日も今日も通行止めに多くブチあたるよな~と苦笑してしまいましたが、これがリアルなツーリングの姿なんですよね。
引き返してR294を白河市街まで快走、ボクスターにはハイオク・ガソリンを、ドライバーには吉野家の牛丼をそれぞれ補給してから、夕刻の東北自動車道へと向かいました。
2日間の走行距離は、871km。
走行時間は14時間22分、平均速度は62km/h。
平均燃費は、11.8km/lでした。
・・・ほら、リッター10キロぐらいは走るでしょ(笑)。
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ゴールデン・ウィークの翌週末は、空いている。
そう確信してツーリングに出た1.5日間は、目論見通り、往復の高速道路を含めてボクスターをひたすらマイペースで楽しく走らせることができました。
ま、普段の週末ドライブでも渋滞が懸念されるのは高速道路だけで、交通量僅少のルートしか走らないんですけどね(笑)。
いずれにせよ、このエリアは「走ってみたい道/もう一度走りたい道」の宝庫ですので、リトライすることにしています。
そんなわけで、遠からず同じようなツーリングの記事をアップすることになると思われます。
予め、ご了承ください(伏)。