宿の前でフロント・ウィンドウの虫取りなどをしていると、誰もいない道を歩いてきたおばあちゃんに声を掛けられた。
訊けば、ホテルから独りで散歩に出てあちこち歩いているうちに、道に迷ってしまったのだと言う。
そのホテルをGoogleMapで調べると、ここから結構な距離があったため、「よくここまで歩かれましたねぇ」と笑ってボクスターでお送りした。
おばあちゃんは87歳、四国から家族旅行でやって来たとのこと。
とても感謝され、私もちょっと嬉しい気持ちになった。
朝飯を腹一杯喰ってチェック・アウト。
ボクスターに興味深々の宿主さんに「生・電動開閉ショウ」を披露、旅の荷物が積めるミドシップ・オープンカーの魅力を存分に語ってから、宿を後にした。
今日のゴールは、新潟行きのフェリーが出る小樽港。
往路と同様、
新日本海フェリーがスピードの速い新造船を投入してくれたおかげもあり、出港時刻が従前の10:00から17:00へと大幅に繰り下がっている。
そう、
2年前は宿を出て港へ直行するしかなかったのだが、今回からは道内最終日もドライブを楽しめるようになったのだ。
D66を岩内まで駆け下り、残り僅かとなった旅の無事を神社に祈ってから、R229/雷電国道で積丹半島を走る。
気温は20度プラス、走るに連れて青空が拡がり、海からの風を切って走るボクスターのドライビングが大変気持ちいい。
改良済みの立派なトンネルをいくつも抜けて、神威[かむい]岬に立ち寄った。
ここは十数年前、札幌在住時代にも何度か来ているが、片道15-20分と言われる岬までの道が険しそうなので、情けないことにこれまで歩いたことがない。
今日は心を入れ換えて突端を目指すことにした・・・のだが、やっぱりしんどくて、岬に到着する頃にはヘトヘトとなっていた(涙)。
ところがその景色は、予想以上の素晴らしさ。
真っ青な海にローソク岩が屹立し、その向こうは水平線まで果てしない海が拡がっている。
写真などで見てはいたのだが、実際にその場に立って感じるインパクトは、やはりバーチャルの比では無いのだ。
いや、来て良かった・・・と思ったが、しかし帰り道もやはりヘトヘトになった(涙)。
引き続きR229で積丹半島をぐるっと走り、腹が減ってきたので昼飯を喰おうと広域農道/フルーツ街道からR5で小樽の街に入る。
小樽と言えば寿司、かもしれないが、私には若鶏の半身揚げの方が数倍も魅力的に思える。
「
ニューなると」のそれは皮はパリッと、中身はふっくらジューシーな逸品だ。
揚げたてのアッツアツを骨までむしゃぶりつき、満腹&満足で店を出た。
フェリーは出航1時間前までの集合が原則だが、それにはまだ多少時間がある。
そこで、市内のコイン洗車場で蟲まみれのボクスターを洗うことにする。
せっかくなので、ボディだけでなくホイールや室内までも清掃した結果、出発前よりもむしろキレイになった(笑)。
料金は都内近郊の半額以下だし、クソ蒸し暑い地元に帰ってから洗うよりも、よっぽどいいのではないかと思われる。
大いに気分を良くして、小樽のフェリー埠頭へと向かった。
この日は台風の影響で太平洋航路が欠航となったらしく、リルートを余儀なくされたと思われるクルマとバイクで埠頭は大混雑。
かなり待たされてから乗船すると、同じ低床車(=シャコタン車)用の第二甲板には987型ポルシェ・ボクスターSやリバース・トライクのBRP・Can-Amスパイダー、FD3S型マツダ・RX-7が並んでいる。
それぞれのクルマを拝見しながらドライバーの皆さん(987は女性!)に声を掛ければ案の定、「北海道は最高、帰りたくない」と全員異口同音に言っていた。
いやしかし、みんなカッコいいなぁ!
デッキに出ると、新日本海フェリーの新造船「
あぜりあ」は切ない汽笛を轟かせて港を離れた。
往路に乗った姉妹船「らべんだあ」と同じく、この船にも露天風呂が設えられている。
タオルをぶら下げて早速入りに行くと、往路の露天風呂で一緒になったお兄さんが気持ち良さそうに浸かっており、大笑いの再会と相成った。
風呂から上がってサッポロ・クラシックを飲み、風に吹かれながら水平線の彼方に沈み行く太陽を眺める。
その姿は雲に隠れてはいるものの、残照を映す空は赤々と美しく染まっていった。
じゃぁな。
また来るぜ、北海道。
(了)