明け方までの雨がまだ残っていたため幌を下ろすことはできなかったが、宿主さんお勧めの道を探して美瑛へと向かった。
観光エリアから外れたその道はなだらかな丘陵の上を走り、晴れていれば十勝岳連峰を一望できるとの由。
残念ながらそれは叶わなかったものの、雨上がりの丘は実に気持ちよく、その風景に佇むクーペ・スタイルのボクスターも悪くない、と思った。
宿へ戻り、朝飯を喰ってチェック・アウト。
出発の準備をしていると、宿主さんが出てきてボクスター談義となった。
ガレージの中の986型ボクスターは、内外装も幌もすべて黒で統一された最終モデル。
程度の良いものを探しまくったとあって、ペイントやソフト・トップの状態も極めて良さそうであった。
仕事の合間を縫ってオープンで走らせるのがとても楽しい・・・と、笑顔で話す宿主さん。
いやー、いいですなぁ(笑)。
これからもお互いにボクスターを楽しみましょう、と手を振って出発。
通称「ジェットコースターの路」の豪快なアップ・ダウンを堪能してから、国道に出た。
R237を北上、観光客の皆さんがワンサカと押し寄せる前に、美瑛の丘を少しだけ走る。
空は晴れ間も戻ってきており、誰もいない丘陵に雲の影が走っていた。
もう雨は降らないだろう、と美瑛の街でコイン洗車を敢行。
昨日は富良野で洗車した直後に大雨でドロドロになったが、今日は安心してその泥汚れを落とせるのだ。
・・・で、洗車が終わるや否や、雨が降ってきた。
もはや、ギャグに近いものがあるな(涙)。
今日は、昨日の雨で断念した十勝エリアへと再び戻ることにしている。
予報は曇り先行だが、雨マークのついたここ上川エリアよりはマシであろう。
旭川市街をD37→D140で大きく迂回していると、追尾しているワケでもないのに赤色灯を回しながら走っている黒いスバル・レガシィの覆面パトカーとすれ違う。
意味がわからないが、汚い騙し討ちを仕掛けるべく善良な市民のクルマを装っているよりはずいぶんいい。
時々雨が降るのでトップを下ろすことができないまま、無料提供中の旭川愛別道路を下りてR39/R273を他のクルマのペースで淡々と走る。
で、大雪ダムでR39が北見方面へと別れると、そこからは予想通りクルマが激減!
晴れ間も見えてきたので屋根を開け、大いに気分を良くして広々とした山間のR273を走った。
三国トンネルを越えると、十勝の広大な樹海が眼下に拡がる。
どこまでも続く緑の中を貫いて延びる巨大な橋やアスファルトを、誰にも従わず、自分が最も安全かつ快適と感じる速度でひたすら走ってゆくのだ。
これぞ、グランド・ツーリングである。
途中のパーキングでひとやすみし、糠平湖にかかる旧国鉄のタウシュベツ橋梁を対岸から眺める。
貯水量が少ないためか、キレイに見ることができた。
その先でR273と別れ、D85/パールスカイラインに入る。
決して「スカイライン」では無いが、この道は北海道とは思えないタイトなワインディングで、久しぶりにギア・スティックが2速まで入った。
これもまた、楽しいのである。
1.5車線レベルの湖岸道路をトレースし、然別湖の畔に出る。
ここへ来るのも超久しぶりで、美しい湖面を眺めているうちに、同じ場所で二十歳の自分が写っている恥ずかしい写真を鮮明に思い出した(汗)。
D85を十勝平野まで駆け下り、地平線まで続く直線の農道を6速のまま東に走り続ける。
進路を北に変え、D806から
ナイタイ高原牧場へのアプローチに入った。
終着までの6kmは道も景色も本当に素晴らしく、クルマやバイクの好きな人が設計したのではないか・・・と走るたびに思う。
今日はこれまで来た中で一番の好天で、終点の駐車場から十勝平野を一望することができた。
仕事を引退してBMWのバイクで北海道を旅しているという、チョイ悪な感じのおじさんと話をする。
が、「クルマ(ボクスター)はカッコいいけど、独りだろ?横にオンナを乗せていないから失格だよ」とダメ出しを喰らった(涙)。
レストハウスで昼飯に喰った巨大なホットドックは、ソーセージの代わりにソースたっぷりのハンバーグが挟まっている。
ボリューム満点で、とても旨い。
気持ちのいい草原に腰を下ろし、ツーリングマップルとスマートフォンを開いて今日のこれからを考える。
時刻は14時を過ぎており、色々思案した挙げ句、一昨日泊まった十勝清水の旅人宿「
こもれび」に再泊することとした。
予約を済ませ、再び十勝のスーパー・ストレートを縦横に走り、宿に到着。
涼しい風が入る夕暮れのテラスでサッポロ・クラシックをキュッとやり、一昨日と同様、宿泊者全員で旨い晩飯を喰った。
この宿に30泊しているという方が近くの川で釣ってきたニジマスを刺身にしてくれたので、遠慮なくいただいたが、これまた旨いのだ。
食後に外へ出てみると、空には満天の星。
北海道GTも、残すところあと僅かとなった。
最後まで事故らず壊さず捕まらず、安全に楽しく走ろう。
(つづく)