朝7時の朝食はトーストとサラダ、スクランブル・エッグ、近隣牧場直送の牛乳、自家製ヨーグルト。
昨晩同様、同宿者とテーブルを囲んで楽しく会話をしながらおいしくいただきました。
ゆっくりとコーヒーを飲んでから出発、トップを下ろしてD106/オロロンラインを北上。
何度来ても感動的な最果てのいっぽん道を、ボクスターは走り続けます。
左手の日本海に浮かんでいるはずの利尻富士は今日も雲に隠れていましたが、行く手の空は徐々に明るく、青空も出てきました。
鹿も歩くD254でノシャップ岬に立ち寄ってから稚内に向かい、公営駐車場にボクスターを置いて港へと歩きます。
今日はこれからフェリーに乗って、初めて礼文島へ行くのです。
フェリー・ターミナルで10時30分発礼文島行の2等乗船券を購入。
ハートランドフェリー「サイプリア宗谷」は定刻に出航し、快晴の空の下、ノシャップ岬の沖を回って外海に出ました。
稚内⇔礼文航路は1日3往復あり、片道約2時間の船旅です。
船内には快適なイス席もありましたが、私はほぼずっと後部甲板のベンチで海を眺めておりました。
波は穏やかで風が気持ちよく、やがて進行左側にフルヌードの利尻富士がその姿を見せてくれるようになります。
山の向こう側には雲がかかっているので、引き続き陸[おか]からは見えていないのでしょう。
いやもう、これって最高じゃないですか(笑)。
フェリーは定刻通り、12時25分に礼文島南部の香深港に着岸。
ターミナルの目の前にあるレンタサイクル「CatRock」で、予約していた原チャリを借り受けました。
2BH-AF79型ホンダ・タクト・ベーシック、50cc、4.5ps、4.1Nm。
今回はデイ・トリップなので、稚内行フェリー最終便の出航まで4時間のレンタル、3,500円です。
ちなみに私は原チャリを含めてほとんどバイクに乗ったことがなく、高校時代に一度だけ、友達のスクーターを借りて無人の農道を走らせたことがあるのみ。
それすらも40年以上前のことなので(涙)、恥ずかしがらずに店のおにいさんから操作方法のレクチャーを受け、ヘルメットを被って慎重に走り出しました。
礼文島はその西岸に道路がほとんどないため、島を一周することはできません。
なので、東岸沿いのD40を南北に走り、点在する景勝スポットへアクセスすることになります。
天候は晴れ、気温は22-23℃と実に快適で、香深の街を出ると交通量はほとんどありません。
海岸線ギリギリのライディングはとても気持ちよく、海と山の景色も素晴らしいの一言。
タクトも小さいエンジンを唸らせながら快調に走ってくれ、もう楽しいったらありゃしません(笑)。
しかしながら、調子に乗って全開バリバリで走り続けていると、にわかオッサン・ライダーは妙に疲れてくるんですね・・・。
途中からはペースを落とし、落ち着いてのんびり行くことにしました。
海沿いのD40を北端近くまで走り、丘へと上がるD926に入ります。
ここには現在休止中の礼文空港があるのですが、廃止ではなくいつか再開させる方針とのことで、最小限の維持管理が行われているのだそうです。
その先からは岬と海とがバーン!と見えるものの、島の北部には低い雲がかかっており、目指す最北限の地は霧に隠されていました。
海岸線まで下り、湾に沿ってD507を走ります。
途中で海を離れ、江戸屋山道と呼ばれる文字通りの山道へとエンジン全開で上っていきました。
1車線レベルの幅員ですが路面は良く、周囲に高い木がないこともあり、晴れていれば絶景の尾根筋を行く最高のライディング体験となったことでしょう。
ですが、実際は海霧に包まれて景色は見えず、しかも冷たい風が吹きつけてめちゃくちゃ寒い!
涙目で必死に山を下り、命からがら道道へと復帰しました(涙)。
ヘトヘトになってようやく辿り着いた、最北限のスコトン岬。
道の終着からは遊歩道で岬の先端まで歩けるようですが、もちろんそんな元気はございません(涙)。
時刻は既に15時、空腹もMax状態。
途中で何度か道を間違えたりしたこともあり、香深港からここまでわずか30km強の道程に2時間半もかかっているのです。
半ば放心状態のまま岬を見下ろすベンチに腰掛けて喰らう、島唯一のセイコーマートで仕入れておいたおにぎりの旨いこと!
腹に収めた二つの握り飯が五臓六腑に沁み渡り、気力と体力とが蘇ってくるのがわかります。
・・・そうだ、俺はおにぎりを喰うためにはるばるここまでやってきたんだ!(←違うって)
ちなみにこの時期の礼文や利尻では、道内でも一二を争う超絶ハイクラスのウニが喰えるとのことで、それを目当てに島へやってくる人も多いとのこと。
しかしながら私はウニがキライなので、エンゲル係数も尿酸値も低く抑えることができているのです(笑)。
元気になったところでUターン、D507を戻り、途中の脇道を澄海岬[すかいみさき]に向かいます。
そのアプローチはなかなかドラマチックで、緑の丘陵地帯を抜けた先を下っていくと、正面に海が見えてくるのです。
終着のパーキングにタクトを駐め、わずかな階段をヒイコラ言いながら展望台へと上がりました。
晴れていればその名の通り素晴らしい海の色が拝めたことでしょう、それでも雲を纏った岬の景色は実に雄大でした。
来た道を引き返し、D40で港まで戻ります。
本当は島の南部も走りたかったのですが、前述の通り予想以上に時間を食ってしまったため、今回はここまでとしましょう。
全開モードでタクトを走らせ、香深の出光でガソリンを満タンにし、ピッタリ4時間・16時半にCatRockへ返却。
ちなみにガソリンはリッター201円とビックリするほどの島価格でしたが、満タンまで1.2リッターしか入らなかったタクトの低燃費にもビックリです(笑)。
稚内行最終便、17時15分発のフェリー「ポレアース宗谷」は、日本海最北域を順調に航行。
西の水平線に沈む夕日を後部デッキから見送って、稚内まで戻りました。
ボクスターを5分ほど走らせて、市内の「旅館山一」にチェック・イン。
稚内地区は全体的に宿代が高いイメージがあるのですが、ここは2食付の最安プランが8,250円とかなりリーズナブルです。
なのに晩飯はホッケの煮付けにホタテの貝焼き、ボタンエビなどの三点盛り、天ぷら、豚しゃぶなどなど、味も量も大満足のレベルなのです。
例によって宿にエアコンはありませんが、稚内の夜は23℃程度まで下がっています。
窓を開け、扇風機を回したまま、今夜もパンイチで爆睡です。
本日の走行距離はよくわかりませんが、ボクスターは60km、ホンダ・タクトは80kmほどでしょうか。
人生で初めて訪れた礼文島で、人生でほぼ初めて原チャリを走らせた体験は、とても新鮮かつ刺激的で素晴らしいものとなりました。
ちょっと慌ただしかったですけどね(笑)。
ボクスターを走らせないことに躊躇もしましたが、それだけの価値がある楽しいスピンオフ・イベントだったと思っています。