朝風呂でサッパリしてから食堂へ。
焼鮭やハムエッグ、納豆、海苔などのオーソドックスな朝食だが、やはり白米が旨くてお櫃をカラにすることとなる。
是非また来てください、と言ってくれた館主にこちらも礼を申し述べ、出発した。
建屋も料理も豪勢なワケではないが、駐車場も部屋も広く、静かでリーズナブル。
このエリアのツーリングの宿として、最適な1軒だと思った。
台風から格下げとなった温帯低気圧のくせに、なんでまた発達してこっちへ来るんだかわからないが、いずれにせよ肚が立つ。
故に東北地方は今日の午後から雨が降り始め、明後日にかけて風雨が強まり大荒れになるのだそうだ。
そんなわけで、明日走ろうと思っていた青森県/津軽半島の龍泊ラインを今日のうちに、雨が降る前に走破することに決定。
湿気の強い曇り空の下、オープンのボクスターは静かなカントリー・ロードのK4をマイペースで北上する。
その先、能代山本広域農道→K64→K63とストレート主体の快走路を文字通り快走し、日本海に沿うR101に出た。
津軽西海岸の空は分厚い雲に覆われ、日本海の色調はどこまでも精彩を欠いている。
しかしながらJR五能線と絡みつつ北へと延びる大間越街道は流れもよく、前が詰まれば安全かつ迅速にブッコ抜き、ハイ・アベレージを保つことができる。
こと走りにおいては、実に気分がいいのだ。
そのまま快調に走り続け、鰺ヶ沢の先で広域農道/メロンロードへと左折、津軽半島最北部へと走る。
いよいよ細かい雨が落ちてきて、やがて無視できないレベルの降雨となったため、仕方なく幌を上げた。
強まる風を意識しながらR339を走り、道の駅「こどまり」で本日初の小休止。
風は強く、雨は弱いながらも止む気配はない。
が、ここで屋根を開けなければ、今日はもう開けることはできないだろう。
肚を括ってルーフを開け、龍泊ラインへと攻め入った。
車室内が濡れないようにアクセルを開け、海岸線のルーズなワインディングから一気に高度を稼ぐヘアピンを駆け上がる。
連続するコーナーはタイトで勾配も厳しいが、ボクスターは意に介さず、2速固定のまま龍に立ち向かう。
何度走っても素晴らしい、極めてエキサイティングな道である。
2.7リッターのボクスターは、265ps/280Nm。
シリーズ中もっとも出力は低いのだが、このようなワインディングを走らせる度に、自分にはピッタリだとつくづく思う。
私のスキルではこれ以上のパワーがあっても使い切れないし、エンジンをレッド・ライン近くまで回すことすらできないであろう。
前車のBMW ALPINA B3 3.3は、中速域の豊潤なトルクを使ってスムーズに走らせるのが素晴らしく気持ちのいいクルマであった。
そんな私もボクスターにスイッチし、「エンジンを回して走らせることの楽しさ」を改めて知ってしまったようだ。
ICE[内燃機関]の終焉が見えてきた今、我ながら逆行にも程があると思う(笑)。
ピークの眺瞰台に達したところで幌を上げ、ボクスターはレイン・モードに入る。
低気圧に伴う雨雲との競争は、なんとかハナ差で逃げ切った格好だ。
しかしながら雨と共に風も強まり、停車中の車体が揺れるほどになってきたため、撤収 。
嵐の中のような尾根を走り、龍飛崎には寄らずに沿岸部まで下りて、R339→R280と風雨のシーサイド・ルートをひた走った。
腹が減ってきたので道の駅「たいらだて」に立ち寄り、レストランでホタテ塩ラーメンを喰う。
正直、あまり期待はしていなかったのだが、これが予想を上回る旨さ。
最後の一滴までスープを飲み干し、大満足で店を出て、雲に抗う平舘海峡越しの下北半島を眺めてからR280に復帰した。
時間は少し早いが、今日はもう宿へと向かおう。
K12で半島内陸部に入り、津軽中里へと走る。
止まない雨の中、広大な無人の水田に建つ巨大な風力発電機が、風を受け唸りを上げていた。
小さな町の中にある「福助旅館」に到着すると、元気なおかみさんが迎えてくれた。
ベッドの置かれた部屋は広く、直ちに浴衣へと着替え、ドリップ・バッグのコーヒーを淹れてソファーで大いに寛ぎまくる。
風呂上がりの晩飯は家庭料理の趣で、ビール片手にどれも残さず腹一杯喰わせてもらった。
雨は夜半に止んだが、窓の外では強風が吹き荒れている。
低気圧は発達しながらよりによって青森へと近づいており、地元のTVでは厳重な警戒を呼び掛けている。
明日は下北半島へ向かうのだが、マジで大丈夫なのだろうか・・・。
本日の走行距離は、327km。
走行時間は6時間42分、平均速度は50km/h。
平均燃費は、11.2km/lであった。