和歌山県・すさみ町の宿、カーテンを開けて眺める海の上の空は雲に覆われてはいるが、雨の気配は感じない。
大いに安心して温泉に浸かり、朝飯をガッツリ喰い、ボクスターの幌を下ろして出発した。
R42を外れ、旧道のK243でウォーミング・アップを済ませたら、海を離れて山に入る。
日置川に沿った静かなK37は2車線がメインで実に快適だが、山奥へと踏み込むに従って徐々に狭く荒れたタフな道となる。
砕け散った落石が散乱するポイントもあり、注意を要するとはいうものの、誰もいない暗い森の中を独りっきりで走るのはまた格別だ。
紀伊半島の奥深さを実感できるルートである。
K221でR311に出、引き続き北上する。
大好きなK198をカッ飛ばして龍神側に出るが、
昨秋に仲間と走ったR371/高野龍神スカイライン方面へは向かわず、その西側のR424を選んだ。
完全2車線の明るい中高速ワインディングを、完全マイペースで走り続けるボクスター。
気温は16度、雲の切れ間から太陽も顔を出し、この上なく素晴らしいファスト・ランが続いている。
有田川町でR480にスイッチしても、走り放題の状況は変わらない。
よりタイトとなったコーナー群をものともせず、ペダル・ワークとステアリング・ワークで軽々とクリアしながら、高野の山懐へと走り込んでいく。
途中、国道を離れて「
あらぎ島」を俯瞰できる展望所に立ち寄ってみる。
有田川の蛇行を受けて扇型、或いは涙滴型に残された土地に棚田が切られており、実に印象的な風景である。
機会があれば、夏や秋などに再訪してみたいと思った。
その手前にある道の駅「
あらぎの里」で昼飯に地鶏の照焼き丼を喰ってからリスタート、途中でK115へと左に折れ、R370からR480で下界へと向かう。
ここからは、今宵の宿がある三重県の津を目指して東へと走ることになる。
無料の京奈和自動車道を五條ICで降り、R370→R169と我慢の市街地走行。
吉野から逃げたK28でマイペースを取り戻し、3桁のローカル県道を結んでR369に入った。
2車線の山間道路を快走し三重県に突入、崩落通行止めのK15を迂回すべくK30→K43と北に向かい、離合不可能な1車線の山道を下り続ける。
いやはや、楽しくて仕方がない。
そのまま久居の街を抜け、津の手前にある磨洞温泉「
涼風荘」に到着した。
この日は運動部合宿の大学生50人と同宿になってしまったが、宿泊棟も食事処も別で、おまけに本来は時間制有料の家族風呂の鍵を一晩無料で出してくれるという配慮っぷりである。
ホースを借りて泥だらけのボクスターを洗い、ひとっ風呂浴びてから晩飯に向かった。
食事処は、地下に掘られた洞窟の中。
特産だった磨き砂の鉱山跡を買い取って、食事処に改装したとのことである。
夏はエアコン要らずの涼しさだそうだが、冬はとても寒いらしく、この日もストーブをガンガンに焚いての晩飯であった。
魚介類や肉をガス火で焼き、白飯をこれでもか、と貪り食う。
本館に戻り、学生の皆さんが食事中であることをフロントで確認してから、大風呂へ。
ゆっくり浸かって汗をかくほど暖まり、部屋でパンツ一丁になって
OneNoteに今日の紀行を打ち込み終わる頃、睡魔がやってきた。
つづく。