夜半に降り続いていた雨は、朝にはすっかり上がっていた。
不思議なにおいのする重曹硫黄泉の露天風呂に入って目を醒まし、部屋へと運ばれてきた朝飯をゆっくりと喰う。
ボクスターのボディはまだ濡れたままだが、嬉しいことに幌はもう乾いている。
屋根を開けて、東鳴子温泉の宿を後にした。
東北道やR4と並行するこの道は地図的にはとても楽しそうなのだが、しばらくは交通量の多い普通の道という感じで面白くもなんともない。
が、大和町を過ぎる辺りから道は街を離れ郊外や山の中を走るようになり、緩みまくっていたテンションも戻ってきた。
愛子[あやし]で一旦国道を離れ、K132→K160と軽めのワインディングを走って釜房湖へ。
秋空の下、静かな湖畔はとても気持ちがいい。
K47からK12に入り、蔵王エコーラインへと向かうチンタラ車列を横目にR457を南下、K51で南蔵王高原を行く。
交通量僅少、気持ちの良いワインディングが続くこの道は大好きで、これまでも何度となく走っている。
空はすっかり晴れわたり、秋晴れというよりもその陽射しはむしろ夏のそれのようだが、気温は25℃前後をキープしており、風は実に爽やかであった。
R113で七ヶ宿湖畔をトレースし、K46で静かな山の中を走っていると、やがて右手にたくさんの鳥居が並ぶ様が見えてくる。
毎回、気にはなりつつも素通りしていたのだが、今日はクルマを置いて少し歩いてみよう。
京都府の伏見稲荷大社や、山口県の元乃隅稲成神社ほどの規模やビジュアルではないが、ここ宮城県の萬蔵稲荷神社も、社[やしろ]まで100基以上の鳥居が並んでいるとの由。
山の中を行く参道に建てられた鳥居はいずれも奉納されたものらしく、それぞれに企業や個人の名前が入っていた。
最後の鳥居をくぐり抜け、手水舎で身を清めてから、参拝。
引いたおみくじは中吉だったが、書かれている内容が妙に恋愛寄りだったので、よくよく見返してみたら「恋みくじ」だった(汗)。
神社を後にし、少し走れば福島県境の小坂峠。
眼下に水田や市街地を、遠くに山並みを見晴るかす旧羽州街道の小さな峠には、涼やかな初秋の風が静かに吹き渡っていた。
この道も最初はクルマが多く、追越しもできずに極めて退屈なのだが、我慢の甲斐あって、川俣町を過ぎると一気に走り放題となった。
気温は30℃近くまで上がり、しかも正面から太陽が照りつけて実に暑い。
ここはひとつ、昼飯パワーで乗り切ろうと道の駅「ふくしま東和」にピット・イン。
併設の「大栄餃子房」で肉汁タップリの丸い餃子を10個平らげ、冷たい水でジャブジャブと顔を洗ってからボクスターに乗り込んだ。
船引を過ぎると再び交通量が増えたため、R349を離れK57から田村広域農道へとエスケイプ。
クルマはまったくいなくなり、ストレート&ルーズ・コーナーを100%のマイペースで思う存分楽しんだ。
小野町から夏井を経て、いわき市へと向かうK66に入る。
磐越自動車道と並行するこの目立たない県道を、実は以前から一度走りたいと思っていたのだ。
地図を眺めてみると、小野町といわき方面を結ぶ道は磐越道やR49、夏井川沿いに開けたK41があり、どう考えても常人がこのK66を選ぶはずがない。
と言うことは、走り放題に違いない!と考えていたのだが、実際は想像以上に走り放題のドライビング・ロードなのであった。
磐越道の併走車をブチ抜かんばかりのストレートから山の中の連続S字セクションに突入、明るい田園風景へ飛出したと思ったら、再び暗い森へと吸い込まれてゆく。
沿道には何もなく、先行車にも対向車にもまったく出会うことはない。
福島県の「ルート66」は、走り好きの貴兄に強くお勧めする次第である。
いわき市までやってきた。
時刻は16時、今日は常磐道で帰路に就くのだが、このまま高速に乗ると三連休最終日の渋滞に嵌りまくることは火を見るより明らかである。
ということで、温泉でのんびりしてから渋滞解消後に帰る作戦とし、温泉街へと向かった。
いわき湯本温泉「さはこの湯」は230円と格安だが、それもそのはず、ここは公衆浴場であり、休憩スペースなどはないことが入店後に判明。
仕方なくザッと浴びて15分ほどで撤収、逆に汗びっしょりとなった(涙)。
これではまったく意味が無いので、市街地から離れた旧い温泉旅館「入の元湯 神泉亭」で再入浴。
ゆっくり浸かって十二分に寛いで、陽が落ちてから出発した。
いわき中央ICから常磐道に乗り順調に走行、美野里PAで晩飯にニラたっぷりのスタミナラーメンを喰い終わる頃には事故渋滞も解消。
再びみちのくへと走りに来る様を想い描きながら、ボクスターを家へと走らせたのであった。
本日の走行距離は、530km。
走行時間は8時間15分、平均速度は66km/h。
平均燃費は、12.5km/lだった。