切れたタイヤを履き替えたボクスターがコンボイに戻り、ツーリングが再開しました。
長久手の街を出た一行は、R155を北に上がってからK33で東に戻り、矢作川沿いのK11を走ります。
この付近は交通量もほぼ皆無、ルーズなコーナーの続くリバーサイド・ロードはツーリング感に満ち溢れており、私はツーリングを続けられることのありがたさを噛みしめながらアクセルを開け続けました。
川は矢作ダムにより堰き止められ、道は岐阜県道20号線となり、打って変わって2速メインのタイトなワインディングとなります。
あっという間にコーナーの先へと消えてゆく911カレラSとALPINAロードスターを追い、かつB3 GT3に追われながら走るのですが、文字通り新品バリバリのP Zeroは、ドライバーの気持ちを代弁するかの如く「慣らし中なんだからカンベンしてよ~」とばかりに抗議のスキール音を挙げ続けます(汗)。
愛知県に入り、R257を南下。
入ったばかりの梅雨がもう明けたんじゃないかと思われるほどの青空の下、極めて気持ちのいいクルージングが続きます。
そんな快速国道をわざわざ離れて突入したK80は、その通称が「天狗いろは坂」。
K507/茶臼山高原道路を跨いでヒルクライム&ダウンヒルを堪能できる、名前の通りの屈曲ルートです。
個人的には本日のハイライトだと考えているこの道で、アンダー・ステアを無視して半ば強引にグリグリと曲がっているうちに、ステアリング・インフォメーションがどんどん豊かになり、3時間前に履かせたフロントのP Zeroがしっかりと路面を捉えるようになってきました。
山を下りて無人の広域農道をハイペースで走り、R257に戻って道の駅「アグリステーションなぐら」へピット・イン。
あんこ玉をトッピングし、コーンの奥底までみっちりと詰まったソフト・クリームを舐め倒しつつ、天狗いろは坂は最高だよね~なんて話をするのですが、「P Zeroのショルダー、いい感じに削れてますよ」「ついさっき履いたばかりのタイヤには見えないな~」「これで慣らしも完了ですね」「いや、あれは慣らしじゃなくて『鳴らし』でしょ」などと、人の気も知らずみんなで大笑いです(汗)。
先ほど跨いだK507を、改めて東に走ります。
道の駅から尾根まで一気に駆け上がり、路面はやや荒れているものの清々しい完全2車線の高原道路を、3速⇔4速アクセル・オン、ノンストップで快走していきました。
終着、愛知-長野県境のパーキングには、標高1,200mの風が静かに吹き渡っています。
聞けば、M郎さんはこの茶臼山高原道路をとても気に入ったとの由。
確かにサーキット由来のB3 GT3は、2速で走るような狭い屈曲路よりもこのような中高速コーナーが連続する道を得意としているはずですし、M郎さんが西伊豆スカイラインをホーム・コースとしていることからも、それは十分に窺えます。
今回は私が先頭に立っていたのですが、後方からのプレッシャーを妙に強く感じたのは、なるほど、M郎さんが後ろでウズウズしていたからなんですね(汗)。
それにしても今日は、3時間のロスタイムがあったとは思えないほど、本当に良く走りました。
まだ十分に明るいのですが、全員一致で宿へ向かうことに決定、長野県最南部の売木村[うるぎむら]へとK46を駆け下っていきました。
静かな一軒宿、「森の宿 遊星館」へチェック・イン。
荷を解き、ユニフォーム(=浴衣)に着替えたら、いの一番で浴場へと向かいます。
まだ時間が早いせいか我々の他には誰もおらず、冷えてゆく山の空気を感じながら、適温の露天風呂を独占させていただきました。
トラブル・シューティングを含めて盛りだくさんだった今日一日を振り返りつつ、オッサン・ドライバーの談笑は続きます。
宿泊予約はいちばん安いプランにしたのですが、それでも晩飯は味&ボリューム共に大満足の炉端焼き。
アマゴの塩焼きから肉や野菜、ラストの五平餅に至るまで、つきっきりで焼いてくれたおばちゃんから地元の話を聞きながら、おいしく楽しく腹一杯喰うことができました。
寝る前の風呂から上がって外に出てみると、空には満天の星。
下り坂の予報に抗して持ちこたえてくれている天気にも感謝しつつ部屋へと戻り、全員で爆睡へと一気に転げ落ちていくのでありました。
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翌朝、長野県売木村の空は薄曇り。
昨晩21時過ぎにすっかり果ててしまったオッサンたちは6時に起床、露天風呂で目を覚ましてから和定食の朝飯を平らげ、身支度を整えてチェック・アウトしました。
当初の予報より降り出しの時刻が遅れているものの、台風の影響もあり、さすがに今日はどこかで雨が落ちてくることでしょう。
それまでの間、1分でも1kmでも長く楽しく走ろうと、いつものように人気[ひとけ]の無さそうなルートを選定してスタートです。
2車線のK46はどんどん狭くなり、リアル1車線区間に突入。
朝イチからカンベンしてくれよ~、と自分で道を択んでおきながら半笑いで泣き言を垂れるルート隊長の行く手に、通行止めの看板が現れるべくして現れました(汗)。
仕方がないので小さな標識を頼りに峠越えの舗装林道へとエスケイプ、くねくねと曲がりまくってK243への迂回に成功。
ノー・マークだったこの県道が望外に楽しく、トルク・バンドをキープしながら、清流に沿った1.5車線路を気持ちよく駆け抜けていきました。
あまりに気持ち良かったためか、先頭をカッ飛ぶShimaさんが曲がるべき分岐を全開で直進し行方不明になる一幕もありましたが、それもまた、想定の範囲内です(笑)。
南信州の山の中には、実にタフな道がいくつもあります。
ある程度の狭隘路なら、路面さえ良ければ笑って走るこのメンバーですが、両サイド・ミラーが草を叩き、落石や倒木に阻まれるような道はさすがに願い下げです。
安易にチョイスしたK430は正にそんな「険道」で、基本的に軽トラ以外は走っちゃダメだろ的な酷い道でした(涙)。
何とか天竜川まで出た4台は、K1→K83と北へ快走。
川沿いから山間部へと信号ゼロで走り続けるこのルートは本当に気持ちよく、セイフティ&ファスト・ランを存分に堪能することができました。
パイロット役に回ってくれたsuite-spiralさんのルーティングで、K251を南下。
すんごい山奥にいきなり出現したトンネルのみの高規格道路/R474を通って、R152に出ました。
ここから北は国道の分断区間、迂回路たる蛇洞林道へと躊躇なく突入していくのですが、これがまた「迂回」じゃなくて「メイン」じゃないかと思われるレベルのクリア・ラップ。
誰もいない1.5車線のタイトなワインディングを、911カレラS・カブリオレ、B3 GT3、ALPINAロードスター、ボクスターの順でぐんぐんと駆け上がっていきます。
終着、標高1,900mのしらびそ高原は静寂に包まれ、我々以外に人の影がありません。
この季節、ライダーやハイカー、チャリダーが多くいてしかるべきだとも思うのですが、ま、台風&梅雨前線で大雨が予想されている中、わざわざこんなところまで来る人は誰もいないってことなのでしょう(笑)。
蛇洞林道は地蔵峠を境に国道へと「昇格」するとは言え、大鹿村の中心部に近づくまでは、むしろ林道よりも狭いハードな1車線区間が続きます。
バイパスのような広々とした2車線から再び山の中の狭い道へと、極端にその姿を変えるのが「分断国道」R152の魅力なのです。
それまでもポツポツと落ちてきていた雨は分杭峠の手前で本格的に降り始めたため、ルーフを閉じてリスタート。
高遠の街に入り、「入野家」の暖簾をくぐってShimaさんお勧めの高遠そばを喰いました。
慣れ親しんだ醤油ベースの蕎麦つゆではなく、辛み大根の絞り汁に焼味噌を溶いてつけ汁とするのですが、なかなかパンチが効いていて旨いんですねぇ。
不肖・私、全国各地で蕎麦を喰っているくせに、今回初めて高遠そばの存在を知った次第です(汗)。
茅野へと向かうR152は引き続き快適な道ではあるものの、交通量が一気に増えて危険な低速走行を余儀なくされるようになります。
集中力が大幅に低下、このままでは居眠りを誘発し重大な事故につながりかねないぞ・・・と危惧していた矢先、杖突峠の手前で先頭のカレラSが脇道へと右折してアクセル・オン!
この近辺に国道を迂回する道は無いと思っていたのですが、さすがはsuite-spiralさん、舗装林道等を駆使して抜けるつもりなんですね。
・・・と思ったのも束の間、道はどんどん狭く悪くなり、うねったアスファルトがアンダー・ボディを擦る音が何度も聞こえるようになります。
雨に加えて霧の立ち込めてきた山の中を慎重に進み続けたのですが、入笠牧場を抜けたところでついに舗装が切れ、ガッタガタのダートになってしまいました。
カーナビや道端の看板で確認すると、この先は更なる悪路で、しかも進入してきた杖突峠方面へと戻ることになるのです。
さすがにそれはアカンのでUターン、かなりの遠回りではあるものの、入笠山周辺から下界へと脱出できるルートをようやく発見。
1時間ほどのロスタイムとはなりましたが、全員&全車がなんとか無事に下山することができました(笑)。
悪天候ゆえに空いているだろうと高を括っていた午後の中央道は、大月JCTから先が25kmの大渋滞!
土砂降りの甲府盆地で4台は流れ解散となり、それぞれの道を択ぶこととなります。
同じ東京方面へと向かうShimaさんは果敢にも大渋滞へ突入していったようですが、特に急ぐわけでもない私は下道で独りのんびり帰ろうと、都留ICでアウト。
ところが、小休止のためにセブン-イレブン都留井倉店に立ち寄ったところ、後からバイオレット・カラーの997型カブリオレが駐車場に入ってきたではありませんか。
「あれれ?・・・ま、とりあえずコーヒーでも飲もうや(笑)」
渋滞を嫌う同じ穴の貉の2台はK20で秋山地区を抜け、R20で大垂水峠を越えて八王子の街へと下っていきました。
二日間合計の走行距離は、940km。
走行時間は15時間59分、平均速度は60km/h。
平均燃費は、9.6km/lでした。
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何よりも、クルマを走らせることが一番楽しい。
それ以上に楽しいことが、思いつかない。
宿の露天風呂で互いにそんな話をしていましたが、今回もまた、楽しさに溢れたツーリングとなりました。
山中でタイヤ交換を要するアクシデントに見舞われたものの、仲間のおかげで無事に立ち直って走り続けられたことで、結果的にポジティブな出来事として記憶に残すことができています。
M郎さん、Shimaさん、suite-spiralさん、本当にありがとうございました。
奥三河や南信州エリアは素晴らしいワインディング・ロードの宝庫ですから、今回走り残した道を走りに来なくちゃいけません。
いずれまた、同道していただきますよ!