・・・レッカーを呼ぶ前に、ダメ元でやってみよう。
標準で装備されているパンク修理剤をボクスターのフロント・トランクから取り出し、説明書に従って右前輪に注入。
エア・コンプレッサーを用いて空気をチャージ、祈るような気持ちで空気圧計の目盛りを確認します。
サイド・ウォールの裂傷はかなり大きく見えるものの、一気にバーストしなかったことから、実際の穴は見た目ほど大きくは無いだろうと推測。
もちろん、修理剤で治るとは思っていませんが、ある程度まで空気が入り、かつ少しでも流出を抑えられるのであれば、空気を足しながら街まで自走できるんじゃないかと考えたのです。
果たして空気圧は何とか2.1バール程度まで上昇してくれたため、荷物を片付けてK33を豊田方面に走り始めました。
最初は、全然ダメでした。
走り出すとすぐにTPMS[タイヤ空気圧監視システム]が空気圧の低下を訴え始め、1.8、1.7、1.6・・・と見る見るうちに空気が抜けていってしまいます。
わずか2-3㎞で1.0バールを割ったため、再びボクスターを路肩に停めてエア・コンプレッサーを繋ぎました。
後から来てくれた3人もあまりの早さに失望しているだろうなと思いつつも、大変申し訳ないがこの方法で行けるところまで行かせてほしいと頼み込んでリスタート。
その後もTPMSのモニターを凝視しながら「1.0バールまで抜けたら足す」で走りましたが、多少なりとも液化ゴムが固まり穴が塞がってきたのか、そのインターバルは徐々に長くなっていきました。
一方、空気を入れている最中には3人が近隣のタイヤ屋へ電話をかけてくれ、片っ端から在庫確認。
贅沢は言ってられないので「サイズは235/40R19だけど225でも245でも可。銘柄も問わない」との条件で捜してもらいましたが、いやはや、本当に無いんですねぇ・・・。
私が架電した最大手のカー用品店でも、「当店を含め、どこのショップでもそのサイズを在庫していることはまずあり得ない」旨を、大変申し訳なさそうに説明してくれました。
ところが、範囲を拡げて捜索してくれていたsuite-spiralさんが、豊田より更に西の長久手市内に225/40R19のピレリ・P Zero2本の在庫を発見!
距離はあるものの、空気の抜けるペースが緩くなってきたこともあり、その場で予約してもらって店へと向かうことにします。
以降も3台の手厚い護衛にガードされながらチャージを繰り返しつつ走り続け、長久手市内の「
タイヤ&ホイール館 フジ スペシャルブランド グリーンロード店」に到着。
ようやく店の看板を目にしたその時、1927年にスピリット・オブ・セントルイス号で大西洋単独横断飛行に成功したチャールズ・リンドバーグが「翼よ、あれがパリの灯だ」と呟いたその気持ちを、初めて理解することができました(←並べるなって)。
支払いを済ませてキーを預け、近くにある「
餃子の王将 長久手店」で昼飯を貪り食ってから店に戻ると、作業は早くも完了したようで、前輪に新品のP Zeroを履いたボクスターが駐車場に鎮座しています。
スタッフの方にお訊きしたところ、ホイール等へのダメージも一切無かったとのことですから、これで100%安心して走らせることができるようになりました。
穴の開いたタイヤに空気を計7回補充しながら50km超を走らせて、トラブル発生から3時間で本件は結了となりました。
山の中でのサイド・ウォール裂傷というトラブルのレベルから考えれば、これ以上望めないほどのいい結果だったと思います。
傷口が極端に大きくはなく、ボクスターがTPMSを装備しており、奇跡的にタイヤの在庫が存在し、何よりも仲間のサポートがありました。
これらのどれかひとつでも欠けていたら、私はツーリングからの離脱を余儀なくされていたでしょう。
仲間とTPMSと幸運とに心から感謝しつつ、ボクスターが戦列に復帰です!
つづく。