梅雨入りの週末、奥三河から南信州を走るべく、仲間と1泊のツーリングに出てきました。
集合は、曇り空の新東名高速道路/駿河湾沼津SA。
エントラントは4名/4台、BMW ALPINA B3 GT3のM郎さん、ALPINAロードスターのShimaさん、ポルシェ・911カレラS・カブリオレのsuite-spiralさん、そしてルート隊長を仰せつかったボクスターの私です。
事前の天気予報はイマイチで、かつ台風接近の報もあったためか、週末のハイウェイに思ったほどクルマは多くありません。
まぁ降らなければ御の字だろ・・・と思いつつ出発すると、嬉しいことに空はみるみるうちに晴れてきて、アスファルトには4台の影がくっきりと映るようになります。
トイレ休憩に立ち寄った遠州森町PAで幌車の3台はトップを下ろし、スタート・ラインである愛知県/新城ICのETCゲートを通過しました。
アスファルトは荒れており、かつ雨上がりのようで全線ハーフ・ウェット状態。
さらにセンター・ラインにはキャッツ・アイが埋め込まれているため、交通量皆無の2速⇔3速ワインディングながら、心置きなく走ることのできるようなコンディションではありません。
しかし、リア・タイヤのみの新品交換で前後のグリップ・バランスが崩れたことに起因すると思われるコーナリング時の違和感を解消するため、パイロット役のミッションをすっかり忘れたボクスターのオッサンは、一刻も早くリア・タイヤを削るべく勝手なペースでアクセル・オン(汗)。
山頂のパーキングで焼菓子を頬張りながら小休止、ここから先はM郎さんのB3 GT3を先頭に、路面状況に注意しながらダウンヒルを楽しみました。
R301に復帰した後、広狭混在するカントリー・ロードのK35をトレースする4台。
「ツーリングマップル」でアタリをつけただけの初めての道ですが、やっぱり奥三河エリアはどこを走っても楽しいんですね。
しかも私は最後尾についているため、前を行く3台が放つ極上のエグゾースト・シャワーを、オープン・トップで浴び放題なんです!
田園地帯や森の中を抜け、R420から次なる未踏のK365に入ったところでブレイク・タイム。
まだ9時過ぎながら初夏の陽射しがジリジリと照りつけますが、川沿いの静かな県道には涼しい風が吹いていました。
いや~、気持ちいいですねぇ。
リスタートして程なく、K365は深い山の中を辿るリアル1車線路となります。
狭いだけならまったく問題ないのですが、アスファルトはガタガタで穴が開き、木の枝や落石の破片が散乱するような悪路になってきました。
ルート隊長としてこの道を択んだ私は一抹の疚しさを感じたものの、メンバーはいずれも歴戦の強者、トランシーバからはこの状況を楽しむ声しか聞こえてきません(笑)。
ま、余裕だよな・・・とほくそ笑みながら最後尾を走る私のボクスターでしたが、右コーナーで何か小さな石のようなものを乗り越えた後、ポーンという警告音と共にメーター・クラスター内に赤い警告マークが灯り、マルチ・ファンクション・ディスプレイ上にウォーニング・モードのTPMS[タイヤ空気圧監視システム]が立ち上がったのです。
「ヤバい、右前タイヤの空気が抜け始めた」
「マジで?大丈夫ですか?」
「今は1.8(バール)・・・いや、1.7に下がった。参ったな、こんな山奥で・・・あ、1.6!」
「あと少しで広い県道に出ますよ。行けそうですか?」
「ちょっと厳しいかな、この減り方は単なるパンクじゃ無さそうだ。1.4・・・1.3」
「スピード落としましょうか?」
「いや、このままのペースで行ってください。いざとなったら路肩に停めます・・・って、停められる路肩が無いや」
「もうちょっとで出られます。頑張って!」
「ダメだ、1.0まで落ちた。みんなごめんよ~」
「よし、出口だ!」
広い路肩にボクスターを停め、右フロント・タイヤをチェックしてみましたが、アウトサイド・ウォールや見える範囲のトレッド面に特段のダメージは確認できません。
そこで、パンタグラフ・ジャッキと十字レンチを使ってタイヤを外してみたところ、内側のタイヤ側面に長さ3cmほどの裂傷が入っていました。
幸いなことにホイール部への影響は認められなかったものの、おそらく鋭い落石の破片にでも乗り上げて切ってしまったということなのでしょう。
マジか・・・。
トレッド面の釘穴程度なら、常備しているプラグ式のパンク修理キットで、30分もあれば恒久的な修理ができます。
しかしサイド・ウォールをカットしてしまったら、プラグ式はもちろん、液化ゴムのパンク修理剤による応急処置すら不可能だということは、2009年秋の天竜スーパー林道で経験済。
その時はALPINA B3に標準装備されていたスペア・タイヤで無事に山を下りることができたのですが、ボクスターは最近のクルマの例に漏れず(もちろん同行の3台も)、スペア・タイヤなんてハナっから積んでいません。
要するに、「パンクしたら修理剤をブチ込んで最寄の整備工場まで頑張れ。サイド・カットやバーストだったら諦めろ」的なコンセプト。
そんなわけで、前述のジャッキやレンチすら装備されておらず、仕方がないので自分で買って、パンク修理キットと共にフロント・トランクの奥底に忍ばせておいたのです。
が、サイド・カットではどうしようもありません。
最寄の街、豊田までは40kmほどあります。
保険会社のロード・サービスに電話をして、レッカー車を手配してもらうことはできますが、かなりの時間を要することになるでしょう。
4台で唯一、広いトランクを持つB3 GT3にパンクしたタイヤ/ホイールを積んで街まで走り、組み替えて戻ってきますよとM郎さんは言ってくれるのですが、それも結構な時間と労力を強いてしまいますし、そもそも履けるタイヤがあるかどうかがまだわかりません。
時刻は9時30分、Shimaさんやsuite-spiralさんがスマートフォンで豊田&岡崎市内のタイヤ・ショップやカー用品店をピックアップしてくれているものの、いずれも開店前で在庫の確認が取れないのです。
だいたい、235/40R19なんてヘンテコなサイズのタイヤを在庫している奇特な店が、そうそうあるとは思えないんですけどね・・・。
人里離れた山の中。
修理はできず、スペア・タイヤも無し。
晴れた空と、仲間の存在が大きな支えとなってくれてはいますが、さすがにこれ以上迷惑をかけるワケにもいきません。
3人には楽しく旅を続けてもらい、私はここでツーリングの続行を断念、レッカーを呼んでボクスターと共におとなしく街まで下りるのが、最適解というものでしょう。
・・・いや、参った(涙)。
つづく。