ボクスターのMA122型2.7Lフラット・シックス・エンジンは、もうハッキリと高回転型のキャラクターだと思ってます。
いや、最高出力を発生するのは6,700rpmですから、「兄弟」
ケイマンの7,400rpmよりも低いですし、他のスポーツ系エンジンと比較しても特に高回転型だというワケではありません。
走らせてみると、エンジンを回すほどにパワー&トルクが出てくる印象、極端に言えば、低速域を削ってオイシイところを高回転側に寄せてるんじゃないか的なイメージがあるのです。
例えば6速1,500rpmレベルでタラタラと巡航中、そのままアクセルを踏みこんでも、ボクスターはちっとも加速してくれません。
ところがダウン・シフトで3,000rpmを超え、とりわけ4,500rpmから上になるとその印象は一変。
極めて刺激的なメカニカル・サウンドが炸裂し、レッド・ラインに向かって回すほどにパワーが出てきます。
スポーツ・モードをセレクトしておけば、高回転域でのスロットル・レスポンスはカミソリのように鋭くなり、それはちょっと怖いほどのレベルです。
また、走行10,000kmを超えてから、エンジンは全域でどんどん良くなっている印象。
購入直後の記憶と比較すると、フィーリングだけでなくパワーもトルクも明らかに上回ってきていると思われます。
いや~、これからがますます楽しみです。
この「下は無いけど上がすんごい」エンジンのキャラクター、これまで所有した6台のクルマの中で最もイメージが近いと感じたのは、
メルセデス・ベンツ・190E2.3-16。
クラシカルなコスワース・チューンの直列4気筒エンジンとポルシェ伝統かつ最新の水平対向6気筒エンジン、どこが似ているのだろうと思っていたら、いずれもかなりのショート・ストローク・タイプだったんですねぇ。
ちなみに
BMW ALPINA B3や
BMW M3C、
三菱・ギャランのエンジンはロング・ストローク、
トヨタ・スターレットと
M3Bはほぼスクエア。
一方、ボクスターの内径行程比は0.81と、メルセデス2.3-16の0.84を超えるオーバー・スクエアっぷりにビックリです。
そんなプロファイルからも、MA122型は「回して楽しむエンジン」なのだというイメージが強くあります。
「ポルシェのミドシップ・スポーツカー」と言うことで、全体的にハードかつピーキーなイメージがあったのですが、これは良い意味で大外れ。
ありきたりな言い方で恐縮ながら、このクルマはとても乗り心地がいいと思います。
不快な振動やハーシュネスは低く抑えられており、アンジュレーションやギャップを上手くいなしながら、予想外のフラット・ライド感を楽しめます。
故に、ハイウェイをひたすら走り続けても疲れませんし、荒れた路面のワインディングでも跳ねてトラクションが抜けるようなことはまずありません。
私のボクスターの足回りには
PASM(可変ダンパー)と19インチのホイールがセットされていますが、なるほど、これなら更なるオプションの20インチ・ホイールでも無理なく履けるような気がします。
屋根を閉めて走るとき、複層構造のソフト・トップは不快な雑音を予想以上に遮断してくれるものの、タイヤ・ハウス内のカバー/インシュレータが全面に貼られていないせいもあるのか、ロード・ノイズは大きめに感じられます。
しかし、そんなもんは屋根を開けちゃえばまったく気にならなくなるんです。
これもまた、オープン・カーの特権ですね(笑)。
山坂道、ボクスターは実に俊敏に気持ちよく走ってくれます。
例えばタイト・コーナーでペダル操作とステアリング操作が上手くシンクロすると、「曲がる」というより「回る」ような感覚を味わうことができます。
これまでに乗っていたクルマとは、旋回の軸が明らかに違うんですね。
私のようなヘナチョコ・ドライバーであっても、いや、ヘナチョコだからこそ、軽量+低重心+ミドシップ・レイアウトのメリットを存分に享受し、ワインディングをクルマ任せでラクに走ることができるのだろうと思っています。
もちろん、限界時の挙動はFR車と比べてシビアなものになるのでしょうけれど、限界まで走らせることなんてできませんから、私(笑)。
電動アシスト機構や可変ギア・レシオの恩恵かどうかはわかりませんが、ステアリングは極めて正確かつ気持ち良い切れ味です。
4輪はアスファルトを捉え続け、少なくともドライ・コンディション下であれば、私の速度レベルにおいて
PSM(スタビリティ・コントロール)が介入してくることは殆どありません。
PASMはダンパーの制御幅が大きいようで、ワインディングにおいても「ノーマル・シャシー」のままでロール/ダイブ/スクワットは十分に抑えられているような印象があります。
逆に言えば、「スポーツ・シャシー」との差があまり大きく感じられないため、PASMはオプション装着しなくても良かったかな・・・と思ったりもしていました。
が、今では「常時無段階制御」こそがPASMのキモであり、「硬軟切り替えスイッチ」はプラス・アルファの機能なのだと考えています。
ブレーキは制動力/フィーリングともに文句無しで、イメージ通りに減速⇒停止することができます。
ポルシェのブレーキはとても高性能だと聞き及んでいますが、少なくとも現時点においては、直前に乗っていたALPINA B3のそれと比較してボクスターのブレーキが格段に優れているとの印象はありません。
これは、B3のブレーキがとても好印象だったためもあるでしょう。
そもそも制動性能はブレーキ・システムの良し悪しだけでなく、車両の重量やディメンジョン、タイヤの能力など、様々なファクターに左右されるものだと思っています。
B3と比較すればボクスターは160kgも軽く、ミドシップ故に前軸荷重も小さいため、ブレーキ・システムへの負荷は遥かに軽いものと思われます。
なので、200km/hからの全力制動や長時間のサーキット走行など、ハードなストッピング・パワーや耐フェード性能が問われるようなシーンになればなるほど、ボクスターのブレーキはその真価を発揮してくるのだろうと考えています。
ま、私にゃそんな走りはできませんけどね(涙)。
ちなみに制動性能とはまったく関係ありませんが、ブレーキ・ダストによるホイールの汚れはとても少ないと感じています。
ありがたいですねぇ(笑)。
私のボクスターは、今となっては少数派と思われるマニュアル・トランスミッション仕様。
エンジン・オイルの交換時、トランスミッション本体に「GETRAG」の刻印を発見し、BMW M3C、ALPINA B3、ボクスターと3台続けてゲトラーグの6段手動変速機を使っていることがわかりました(笑)。
ボクスターのトランスミッションはエンジン後方、リア・オーバーハング部にレイアウトされています。
従ってシフト・レバーからは遠く離れており、両者は2本の長~いケーブルで結ばれているようです。
そのせいか、変速操作にはゴクゴクッとしたダイレクトな手応えは感じられませんが、スパスパッと軽く決まる爽快感があり、これはこれで大変気持ちよく感じられます。
また、私のボクスターはオプションの
スポーツ・クロノ・パッケージを設定しているため、トランスミッションのマウントには
磁性流体によりその硬さを変化させる仕掛けが組み込まれています。
非設定車と乗り比べたわけではありませんが、最重量物であるエンジン+トランスミッションの揺れを制御することは、低速時/巡航時の乗り心地と加減速旋回時の操作レスポンスとの双方を向上させているだけでなく、この安定したシフト・フィールの実現にも一役買っているのではないかと思っています。
前述の通り、私のボクスターにはPASMとスポーツ・クロノ・パッケージが装備されており、シャシー・コントロールは2段階、ダイナミクス・コントロールは3段階からそれぞれ任意で選ぶことができるようになっています。
私の場合、街中を走るときや高速道路を巡航するようなときは、ノーマル・シャシー×ノーマル・モード。
ハイウェイを元気よく走らせたり、中高速ワインディングやカントリー・ロードを快走するなら、ノーマル・シャシー×スポーツ・モード。
2速メインのタイトな屈曲路であれば、スポーツ・シャシー×スポーツ・モード・・・ってな感じで使い分けています。
なお、オート・ブリッピング機能を有するスポーツ・プラス・モードは、独りで走る際にはあまり使っていません。
仲間とドライブに行き、逃げたり追いかけたりする必要が生じた時などに限り、止むを得ず起動しているのです(←?)。
・・・長くなりましたので、つづく。