昨晩出会った鹿児島の子供たちは、艦内で私を見つける度に「ポルシェのおじちゃん!」と駆け寄ってくるので、一緒に朝風呂に入ったり、デッキに出て海や船を眺めたり、壊れたジャージのファスナーを治してやったりした。
彼らを親元に帰してからバイキングの朝食をゆっくりと食べ、コーヒーを飲みつつ「ツーリングマップル関西」を開く。
本来、艦は8時前に大阪南港へ入る予定であったため、下船後にダッシュで走って東名のアホ渋滞が始まる前に自宅へと戻る算段であった。
ところがGT初日に船会社から電話があり、機関調整により速度を落として航行するため、着岸が2時間程度遅れるとの報告を受けていたのだ。
ということで当初の計画は不可能と判明、寄り道しながらのんびり走って夜遅くに帰ることに決定。
念のために関西版のツーリングマップルを持ってきておいて、良かった(笑)。
フェリーは10時前に入港。
荷物をまとめて第二甲板まで降りると、目を輝かせた鹿児島の子供たちが待っていた。
彼らとは昨日の夜、「ポルシェと一緒に写真を撮ろうぜ」と約束していたのだ。
ボクスターのトップを下ろしてドアを開け、ほら、乗りなよと言うと、「乗っていいの?ホントに?やったあ!」と大喜び。
4人の子供たちを2人ずつ交代でボクスターに乗せ、お母さんにバシバシ写真を撮ってもらう。
みんな本当に嬉しそうだ。
お母さんたちからも何度もお礼を言われたが、礼を言わなければならないのは私の方だ。
ボクスターに乗っていて本当に良かったと、改めて思った。
と、下船案内に急かされるように自分たちのクルマへと戻る家族の中から、4年生の子が独り走ってこちらへ引き返してくる。
そして直立の姿勢から「どうもありがとうございました!」と深々と頭を下げて言うではないか。
小学生なのに、なんて礼儀正しいんだろう・・・と驚いたが、真剣なその表情はもはや子供のそれではなく、一人前の男の貌[かお]であった。
おじちゃん、グッと来たよ。
さようなら、元気でな。
網の目のように入り組み、且つ至るところにアホほどオービスが設置されているワケわからへん大阪の都市高速をカーナビに指示されるまま走り、西名阪自動車道から名阪国道へ。
Ωカーブを経て針ICでアウト、K28を南下し、連休の観光客で大賑わいの
室生寺を避けて、その先の
龍穴神社に到着した。
誰もいない、巨木に囲まれた境内には凛とした空気が満ちており、二礼二拍一礼でここまでの無事に礼を申し述べ、併せてこれからの息災を祈る。
この神社へやって来ようと思ったのは、981型ボクスターに乗る
gonさんのBlogで何度か拝見していたからだ。
更にもうひとつ、ここから北へと延びる広域農道/やまなみロードが「奈良ニュル(奈良のニュルブルクリンク)」と呼ばれており、一度走ってみたいと常々思っていたからでもある。
奈良ニュルは、ストレート&ルーズ・コーナーが主体のハイスピード・コース。
交通量も少なく、快晴の空の下でオープン・トップのボクスターを気持ちよく走らせることができる。
ただしアスファルトが荒れている箇所も少なくはなく、それがまたニュルブルクリンクに準[なぞら]えられている所以かもしれないな、とも思った。
月ヶ瀬まで走りきったところで、K82にスイッチ。
奈良ニュルから一転、2速メインのテクニカルなショート・コーナーが続くダム湖沿いのルートは、今回のGTで最もエキサイティングなステージであった。
ダム上を走ったその先の三叉路に、目指す「
カフェセブン」はあった。
話には聞いていたのだが、実際に訪れてみると、ロケーションや雰囲気を含めて本当にクルマ好きのための素晴らしいカフェであることが実感できる。
「(ボクスターのナンバーを見て)関東から来はったんですか!」
「いや、九州からです」
「九州??」
と、地元のお客さんからも気さくに声を掛けていただき、旨いコーヒーを飲みながら楽しくクルマ談義をさせてもらった。
パーキングに並ぶクルマたちも強烈で、ケータハム・セブンやA310系のアルピーヌ、ルノー・クリオRSゴルディーニ、アバルト595コンペティツィオーネなどなど。
果ては70年代のシーサイドモーターのショウ・ルーム以外では見たことのない、ランボルギーニ・ウラッコまで現れたのだ(汗)。
奈良や三重と県境を接する京都の山の中、走り放題のワインディングに囲まれた、クルマ好きの集まるカフェがある。
関西の皆さんが本当に羨ましいと、心底思った。
さて、そろそろ帰路に就こう。
白樫ICから再び名阪国道に乗り、伊賀SAで遅い昼飯に伊賀牛ハンバーガーを齧りながら、道路状況をチェックする。
懸念していた東名阪自動車道の鈴鹿-四日市IC間に渋滞の気配は無かったため、下道には降りずにそのまま走り続けることとした。
伊勢湾岸自動車道、東名高速道路と順調に走るうちに、神奈川県内で始まった東名アホ渋滞の情報をキャッチする。
ところがその渋滞は事故に由来するものらしく、静岡県の小笠PAに立ち寄って詳細を確認したところ、その長さは40kmに及び、通過に3時間以上かかることが判明!
ということで今日中に帰るのは諦めて、直ちに近くの宿を検索&予約する。
予めGTQの日程を1日少なくし、休暇の最終日を予備日としておいたことが奏功したのだ。
吉田ICで東名を降り、「
すき家」で牛丼の定食を平らげてから、「
カンデオホテルズ静岡島田」にチェック・イン。
昇る月を仰ぎ見つつ、大渋滞の地獄絵図を思い浮かべ独りほくそ笑みを催しながら、最上階の広い露天風呂にのんびりと浸かった。
もしも予備日を取っていなかったら、阿鼻叫喚の40km渋滞へと自ら突入し、3時間以上に及ぶ拷問に耐えきれただろうか・・・。
いや、無理(即答)。
本日の走行距離は、412km。
走行時間は5時間33分、平均速度は76km/h。
平均燃費は、12.5km/lであった。