秋田県北部の山奥、湯ノ沢温泉の朝。
晴れ間も見えてきた空の下、肌寒い山の空気の中で露天風呂に浸かる。
バイキングの朝飯は地物野菜を中心に選び、食後のコーヒーを外でおいしくいただいてからチェック・アウト。
二泊三日という短い旅程故、北上を続けた昨日から一転し、今日からはひたすら南へと下る計画だ。
もちろん言うまでもないことだが、高速道路や幹線国道は使わずに、「走れる道」を選んで走りまくる所存である。
クネックネのマニア向け屈曲路だったK309/くまげらエコーラインの続きは、打って変わって快適2車線路。
屋根を開け放ったボクスターを、ダム湖に沿って気持ちよく走らせた。
山を下りたところで、R105/羽州街道へと左折。
熊を撃つマタギが歩くという大きな山々の間を縫って、2車線路が南に伸びている。
路面はやや荒れてはいるものの、魅力的な山越えの区間などもあり、ツーリング感に溢れた良道だ。
交通量はゼロではないが、時折現れる前走車を安全・確実・迅速にブッコ抜いて、ボクスターは走り続ける。
脇道に入り、黄金色の水田の脇でひとやすみしていると、秋田内陸縦貫鉄道のディーゼル・カーがガタンゴトンと走り去っていった。
角館から南は、良さそうな県道や広域農道を選んで走る。
K10→K254→K30→広域農道/出羽グリーンロード→K57と、ツーリングマップル3ページに渡り、素晴らしいカントリー・ロードが続いていた。
いやもう、走り放題にも程がある。
この近辺もやはり水田が広がっていて、米がたわわに実っている。
今年の米はデキがいい、と宿のおにいさんから聞いていたこともあり、どこかで新米を買って帰ろうと思った。
例によって朝飯を死ぬほど喰っているのでそれほど空腹感は無いのだが、炭火で焼かれている豚串があまりにいい匂いを放っていたので、昼飯代わりに買ってみた。
これがまた脂が乗っていて、実に旨いのだ。
併設された農産物直売所に入ってみると、探し求めていたあきたこまちの新米がラスト1袋残っていたので、迷わずお買い上げ。
新米の出荷はまだ始まったばかりらしく、昨日/今日と何軒か立ち寄った直売所や道の駅では、そもそも昨年の米しか置いていなかったのだ。
ここで独り、ルート検討会議を開催。
宿のある鳴子温泉郷へは、R108/仙秋サンラインで行くのが常人の選択である。
確かにいい道ではあるのだが、さすがは三連休、多くのクルマやバイクがR108へと向かうのを見ていたため、K51で小安峡方面へ向かうこととした。
で、これが大正解。
途中で俄か雨がパラついてきたが、そんなことにはお構いなしだ。
R398に合流、観光客が歩く子安峡温泉をゆっくりと通過し、その先の奥小安大湯温泉「阿部旅館」へ入浴に立ち寄る。
笹濁りかつ適温、開放的で大変気持ちのいい露天風呂にのんびりと浸かっていたのだが、その下を流れる清流にも川底から温泉が沸いているらしいので、素っ裸で河原へと下りてみた。
躊躇しつつ川へ尻を沈めてみたところ、確かに温い風呂ぐらいの湯温はある。
が、強い流れに袋は激しく翻弄され、あまつさえ自身も身体ごと流されそうになったため、這う這うの体[ほうほうのてい]で逃げ出した次第である(涙)。
風呂上がりのボクスターは、相変わらず極上の気持ち良さ。
もうこれだけで、オープンカーを買う理由に十分なり得ると心から思う。
初めて走った30年ほど前は離合困難な狭隘路、今は巨大な橋とトンネルとで徹底的に改良されたR398をぐんぐん駆け上がり、花山峠で宮城県に入る。
この道、走っていて楽しいのはもちろん、山の景観も本当に素晴らしいのは、接続するK282/旧栗駒有料道路やその先のR342と同様である。
連続するタイト・コーナーなどものともせずにボクスターは山岳地帯を脱出、R457からK253を走って宿へと向かった 。
泉質の異なる内湯と露天風呂で汗を流したら、お待ちかねの夕食だ。
8畳一間、料理も品数を抑えたいちばん安い8,000円のプランだが、部屋に運ばれてきた食事はとても旨かった。
ジョッキ片手に豚肉の陶板焼きを喰い終わる頃、ちょうど釜飯が炊き上がるという按配なのだ。
その釜飯や茶碗蒸しから慎重に撤去した椎茸以外(汗)、すべて完食&大満足。
さて、寝る前にもうひとっ風呂浴びてくるとしよう。
本日の走行距離は、314km。
走行時間は5時間04分、平均速度は64km/h。
平均燃費は、11.3km/lだった。