朝6時の長良川温泉には、やっぱり雨が降っていた。
最新の予報では今日も明日も降り続き、おまけに明日はところによって雪になると言うから穏やかでは無い。
まぁ天気に文句を言っても始まらないので、大浴場でどっぷりと朝風呂に浸かり、レストランでたっぷりとバイキングの朝飯を喰った。
地下駐車場のおかげで雨に当たることなく荷物の積み込みを終え、ボクスターをスタートさせる。
当初はどこかであと一泊しようかとも思っていたが、さすがに雪なんぞに降られちゃたまらないので、今日を最終日として帰ることにした。
とは言え、最寄のICから高速に乗ってまっすぐ帰るようでは芸が無いし、名折れだ。
今日もまた「いい道」を選んで走り、どこかでゆっくりと昼飯を喰ってから帰ろうと思う。
混雑する市街地を出て東海北陸自動車道を跨ぎ、K80で見坂峠を越えてゆく。
「大型車通行不能」との嬉しい看板に偽りは無く、無人の峠道は1車線レベルで実に気持ちがいい。
強まる、或いは弱まる雨の中、K63→K85→K294→K58とクルマの少ないローカル県道を結んで走り、R41を経てR256に突入。
2年前の秋に反対方向から仲間と爆走し、その楽しさに大笑いした道である。
佐見川沿いのストレートから桜峠を越える屈曲路まで、広狭混在何でもありの交通量僅少ドライビング・ロード。
屋根は開かずとも、ボクスターの走りを存分に堪能することができた。
R257を南下、K3を経てR19で長野県に入ったのだが、何故か妻籠[つまご]付近の荒れた林道に迷い込む。
「来るんじゃなかった感」に苛まれながらUターンもできない狭路をとぼとぼと辿り、ようやく出たところの廃校跡でひとやすみ。
ここは旧妻籠小学校、景観保全のためにクルマの乗り入れが禁じられている妻籠宿の上にいるようで、周囲には人っ子一人見当たらない。
黒い板張りの木造校舎や苔むした二宮金次郎像に、時代の流れを感じさせられるのであった。
再びR256を東進していると(しかし昨日今日とR256をよく走る)、「手打そば 蝶家」の看板を発見。
風味豊かな手打の黒い田舎蕎麦や、カラッと揚げられた天ぷらはもちろんだが、ここの店はそばつゆが実に旨い。
ダシの効き具合が絶妙で、とろりとした蕎麦湯でキレイに飲み干し、大満足で店を出た。
雨は上がっている。
すぐにまた閉めなければならないと解ってはいるものの、乾いていた幌を下ろして走り出す。
その先、これも2年前に激走した大平峠&飯田峠越えのK8は、4月中旬まで冬期通行止めとなっている。
いつかまた季節のいい時に走りに来ようと心に決め、R256で清内路峠のトンネルを抜けていく。
美しい名前で覚えていたこの峠道、前回走ったのはもう20年以上も前で、当時はトンネルなどなく狭い峠道を通って妻籠方面へ向かったことを思い出す。
その頃はまだ、妻籠小学校にも生徒たちの声が響いていたことだろう。
昨日走った岐阜/滋賀県境のR303は落ちたら死ぬレベルの凶悪山岳路だったし、紀伊半島の国道も狭隘区間が延々と続いていて、今のような完全2車線路になるとは夢にも思っていなかった。
当時20代の終わりだった私も、今や50歳過ぎのオッサンなのだ。
月日は百代の過客にして、行かふ年も又旅人也。
・・・ダメだ、この一行しか思い出せない(笑)。
再び雨が降り始め、仕方なくボクスターのトップをクローズする。
もうすぐ街に出る。
中央自動車道/飯田山本ICまで、あと少しだ。