降りしきる雨の中、D53を北上する。
空はベッタリと塗りつぶされたかのようなグレイで、雲の切れ間などは一切見当たらない。
冷たい雨に打たれる緑の草原が続く丘陵地帯を、青空を妄想しながら走った。
摩周の町で給油をし、ガソリン・スタンドのおじさんと言葉を交わす。
今週は天気がイマイチで、曇りと雨との繰り返しなのだそうだ。
テンション低めでR243からD52に進み、屈斜路湖畔でひとやすみ。
誰もいないボート乗り場で雨に煙る湖面を眺めつつ、今日はこれからどうしようかと考える。
スマートフォンで雨雲レーダーをチェックしてもやはり北海道全域で雨が降っているようではあるが、十勝/帯広方面がまだマシのようだ。
というわけで、そっちへ行くことにする。
R241を西に向かい、阿寒湖をパスして足寄まで走り、松山千春の唄がひたすら流れ続ける道の駅「
あしょろ銀河ホール21」でトイレに立ち寄った。
ちょうど昼時だが、朝飯爆喰いのおかげで腹はまったく減っていない。
ツーリングマップルを眺めつつ、もう少し走ってから何か軽く喰おうと考えているうちに、帯広の「
六花亭」本店へ「サクサクパイ」を喰いに行こうと思いつく。
サクサクパイは賞味期間がわずか3時間と言われており、本店へ行かないと買えないんだよ的な話を以前に聞いたことがあるのだ。
弱まりはするが止むことのない雨の中、面白くもないR242とD31で70kmほど走り、帯広市内の六花亭本店に到着。
平日の午後なのに駐車場待ちが発生していたため、近くのコイン・パーキングにボクスターを放り込んで店に入った。
専用のショウ・ケースの中に、サクサクパイが恭しく積まれている。
テイクアウトしてもこの雨では喰う場所もないため、店内で喰えると聞いて2Fの喫茶室へ。
ところがこれまた満席、「こんなんでいいのか?オレの北海道GTは」と自問自答を繰り返しながら、席が空くのを待った(←待つなって)。
しかし待った甲斐があり、初めて口にしたサクサクパイはサクサクとカリカリの中間ぐらいな感じでとても旨い。
店のおねいさんに訊いてみたところ、「賞味期間3時間」の理由はこのサクサク感が時間と共に弱まってしまうから、とのことであった。
ついでに頼んだ苺のミルフィーユも、生クリームとカスタードクリームとストロベリーソースが相まってこれまた実に旨い。
大満足で店を後にし、今日のGTのハイライトはこれでいいやと思った(←思うなって)。
雨は一向に止む気配を見せない。
以前にB3でも訪れた白樺並木に立ち寄ってから、少し早いが宿へと向かうことにする。
昼頃に電話で予約しておいた「
こもれび」は、広大な牧場や畑が広がる丘陵地帯の奥にひっそりと佇む、農家を改築したと言う一軒家の民宿である。
先日泊まったサロベツの「あしたの城」と同じ「
とほ宿」のネットワークに加盟している、ドミトリーを備えた旅人宿だ。
びしょ濡れのウェアやブーツを干しているライダーの方もいて、雨の日のバイクや自転車旅は本当に大変だと改めて思った。
晩飯は宿泊者全員が同じテーブルを囲み、地元の食材で作ったという大皿料理を取り分ける。
どれもこれも大変旨く、ペコペコだった腹は一気に膨れ上がった。
夜は皆で酒を呑みながら、旅の話に花が咲く。
毎年8ヶ月間働いて4ヶ月間北海道で遊んでいると言う人や、この宿に30泊していると言う人もいる。
とても常人とは思えないが、北海道にはやはりそれだけの魅力があるのだろう。
独り旅には、こうして見知らぬ者同士が語り合える旅人宿もまたいいものだな・・・と思い始めている。
(つづく)